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第三章
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駅は閑散としていた。
気象庁から警戒情報が発令され、外出を控えるよう防災無線が流れた市内を出歩く者は、指を折って数えられるほどだった。
駅には普段と何一つ変わらず黙々と真面目に仕事をこなす新人と、側からそれを眺めるだけのベテラン駅員が椅子に座っていた。
新人の駅員は造物のように顔色一つ変えないが、電話が掛かってくると一変して笑顔になる。そして、電話が終わると再び固まった表情で仕事に戻る。ベテランの駅員は急に人が変わったように仕事をする新人を見てただ笑っている。
他の少数の人間は、駅内の待合室に入らずその辺を歩き回っていた。
私たちは券売機で二人分の切手を買って、待合室でいつ来るか分からない電車を待っていた。
私の住んでいる御崎町までは春見市から歩けば一時間ほどの場所にある。家までは御崎駅からだと、改札を抜ければ三分も歩いてかからない。
春見市は人の行き来が激しい為、他の市町よりも走る電車の本数が多くなっている。
「電車いつ来るのかなぁ?」
私は室内にある電光掲示板を見て呟いた。
本数が多いこの駅では、電車の到着を知らせるベルが鳴り止むことを知らないほど耳に入ってくる。ただ、今日は数少ないベルの休息日だった。電車の大半の運行を見合わせ、数少ない本数だけを動かしている為、いつもの待合室とは違って窓を大粒の雫が打ちつける音が鳴り響いていた。
春人も掲示板を見て、ため息を吐いた。
「はぁ……。まぁ、台風で電車が遅れてるし仕方ないんだろうけどね」
「……そうだよね。でも、電車が動いてるだけでもありがたいって思わないといけないねぇ。そっか、いつ来るんだろう……」
「うん、動いてるだけありがたいよ。でもね、こうして心乃ちゃんと二人きりでゆっくり話しするのって久し振りでなんだか嬉しいって思ってるんだ。だってあのままの勢いで心乃ちゃんの家に行って、お母さんに反対されたら心乃ちゃんと話しが出来なかったかも知れない……。だから、電車が動いてなくて本当は良かったって思ってる」
「うん、私もだよ。だって、春人くんと久し振りに話しが出来て、いっぱい色んなことを知って、それにもっと春人くんの事知りたい。だから、春人くん……。お母さんたちだけでも見方になってくれるなら、もっと春人くんの事知りたい、ううん、もっともっと春人くんの事知りたいな」
「僕ももっと心乃ちゃんのこと知りたい。だから、僕は心乃ちゃんと従兄妹でも構わない……。誰に反対されても気にしない。だって僕は心乃ちゃんのこと好きだから。初めて好きな人が出来たんじゃなかったんだ。心乃ちゃんのこと幼い頃からずっと好きだったんだ。……なんで忘れてたんだろなぁ」
春人は私の瞳を見て話していたが、私は見られるのが恥ずかしくて顔を赤らめていることに気づかれないよう、待合室から見える二番線ホームを眺めていた。
(春人くん気づいてるかな? 私が緊張してるの……。好きって言われると胸が苦しいなぁ。だって、これから私の親に会いに行くんだよ、春人くん……)
「……私も春人くんのこと好きだよ。春人くんとなら一緒に幸せになれると思う。お願い春人くん、お母さんたちに話しをちゃんと聞いてもらお。それに私も春人くんに言わなかったこと話すよ」
「うん、ちゃんと話し聞いてもらおう。僕たちは幼い頃からお互いのことを想う気持ちは変わってないんだって」
春人は私の手を握ってから、さらに力を入れて再び握りなおした。
繋いだ手から春人の決心が伝わってきた。
気象庁から警戒情報が発令され、外出を控えるよう防災無線が流れた市内を出歩く者は、指を折って数えられるほどだった。
駅には普段と何一つ変わらず黙々と真面目に仕事をこなす新人と、側からそれを眺めるだけのベテラン駅員が椅子に座っていた。
新人の駅員は造物のように顔色一つ変えないが、電話が掛かってくると一変して笑顔になる。そして、電話が終わると再び固まった表情で仕事に戻る。ベテランの駅員は急に人が変わったように仕事をする新人を見てただ笑っている。
他の少数の人間は、駅内の待合室に入らずその辺を歩き回っていた。
私たちは券売機で二人分の切手を買って、待合室でいつ来るか分からない電車を待っていた。
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「電車いつ来るのかなぁ?」
私は室内にある電光掲示板を見て呟いた。
本数が多いこの駅では、電車の到着を知らせるベルが鳴り止むことを知らないほど耳に入ってくる。ただ、今日は数少ないベルの休息日だった。電車の大半の運行を見合わせ、数少ない本数だけを動かしている為、いつもの待合室とは違って窓を大粒の雫が打ちつける音が鳴り響いていた。
春人も掲示板を見て、ため息を吐いた。
「はぁ……。まぁ、台風で電車が遅れてるし仕方ないんだろうけどね」
「……そうだよね。でも、電車が動いてるだけでもありがたいって思わないといけないねぇ。そっか、いつ来るんだろう……」
「うん、動いてるだけありがたいよ。でもね、こうして心乃ちゃんと二人きりでゆっくり話しするのって久し振りでなんだか嬉しいって思ってるんだ。だってあのままの勢いで心乃ちゃんの家に行って、お母さんに反対されたら心乃ちゃんと話しが出来なかったかも知れない……。だから、電車が動いてなくて本当は良かったって思ってる」
「うん、私もだよ。だって、春人くんと久し振りに話しが出来て、いっぱい色んなことを知って、それにもっと春人くんの事知りたい。だから、春人くん……。お母さんたちだけでも見方になってくれるなら、もっと春人くんの事知りたい、ううん、もっともっと春人くんの事知りたいな」
「僕ももっと心乃ちゃんのこと知りたい。だから、僕は心乃ちゃんと従兄妹でも構わない……。誰に反対されても気にしない。だって僕は心乃ちゃんのこと好きだから。初めて好きな人が出来たんじゃなかったんだ。心乃ちゃんのこと幼い頃からずっと好きだったんだ。……なんで忘れてたんだろなぁ」
春人は私の瞳を見て話していたが、私は見られるのが恥ずかしくて顔を赤らめていることに気づかれないよう、待合室から見える二番線ホームを眺めていた。
(春人くん気づいてるかな? 私が緊張してるの……。好きって言われると胸が苦しいなぁ。だって、これから私の親に会いに行くんだよ、春人くん……)
「……私も春人くんのこと好きだよ。春人くんとなら一緒に幸せになれると思う。お願い春人くん、お母さんたちに話しをちゃんと聞いてもらお。それに私も春人くんに言わなかったこと話すよ」
「うん、ちゃんと話し聞いてもらおう。僕たちは幼い頃からお互いのことを想う気持ちは変わってないんだって」
春人は私の手を握ってから、さらに力を入れて再び握りなおした。
繋いだ手から春人の決心が伝わってきた。
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