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初登校①

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昨夜フレイに引き摺られ無事に寮へと到着する事が出来た。

寮母さんも既に事情を把握していたらしく、直ぐに部屋へと案内され一夜を過ごす事が出来たのだ。




そして、今日僕の初登校日。

髪に寝癖がついていないのも確認したし、制服に皺も付いていないのも確認済みだ。

念の為、もう一度鏡の前でしっかり確認していると、扉を叩く音が聞こえた。

そして、昨夜急いで準備した鞄を持ちシロイは部屋を飛び出した。



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「あ~ドキドキするよ。」


昨日は、なんやかんやで校内に入る事はできなかった。

初めて歩く校内は、同じ位の年頃の子で溢れそれぞれ雑談を楽しんでいるようだ。

そういえばクラスは、特例としてフレイと同じクラスにしてくれたんだとか。



「...一つ警告しておくわ。」


途中で神妙な顔をして立ち止まるフレイ。


「何?」


シロイは不思議に思いながらも問い返した。


「教室で何があろうとあんたは何もしないで。」


何もするな、とは何か起こるのであろうか。


「う、うん。分かったよ..。」



フレイの表情を見るに、取り敢えず今は大人しく了承する方がいいとだけは分かった。

先程から一切僕の方を見ないフレイ。
いつも前だけを向いているのに、今はずっと下だけを向いている。


何かに怯えているようにも感じられる。



(これは...)



シロイには、この現状を見て思い当たる考えがあった。

ただ、いつものフレイを見る限りそんな事を許す性格ではない筈だ。

しかし、もし事実なのであれば何もしないわけにはいかない。


(翡翠さん...!僕がフレイを助けます!)


シロイは静かに決意する。

それからは、会話等も一切無く黙々と歩き続けるフレイ。




そして、いよいよ僕達は目的の教室へとたどり着いた。

扉の上には「S1」と書かれた表札。
これから何年か通う事になる教室だ。


因みに、ここに来るまでの道のりは、フレイを気にしすぎて全く覚えていない。

帰りに覚えないと明日は迷子確定だ。


「じゃあ、入るわよ。」


声と同時にガラガラと音を立てて開く扉。

緊張しながらもシロイは教室へと足を踏み入れた。

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