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第8章 私を探して…

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 もちろん信子の気持ちは、王子には理解できるはずもないのだけれど…
「キミの住む国は、こことは全く違う暮らしをしているんだろうねぇ」
まだ見ぬ世界のことを思い、ため息をつく。
「ボクもいずれは、この国の王になるわけだから…
 本当はもっと、違う世界に、行ってみたいんだ」
王子はチラリと、信子の方を見る。
だがそれには答えられず、信子は黙ってうつむいている。
それから新しいため息を1つつくと、王子は信子に切実な瞳を向け、
「もっともっと、知らないところへ行って、色んなことを見てみたい。
 だけど中々王様たちは、許してくださらないけどね」
自分の両親のことを、許すでもなくやけに他人行儀に言うのが、
珍しい、とも思う。


  やがて馬車は、ゆっくりと進み出す。
乗り心地は…というと、思ったよりも早くて、アップダウンは腰に
響くのだけれど、乗り心地は、そう悪くはない。
視線も意外と高い位置にある」
窓からは…色んな景色が、目の前を通りすぎて行く。
 そういえば…この国に来て、まだ1度も外に出たことがなかった…と、
あらためて気づく。
 お城の1室に、ずっと閉じこもっていた時は、ひたすら外に出るのが
怖かったけれど。
見たこともない景色が広がる。
自分の住む町のように、ごみごみとしているわけではなく、まだ1度も、
外に出たことがなかった…と、あらためて気づく。
 お城の一室のずっと閉じこもっていた時には、ひらすら外に出るのが
怖かったけれども。
見たこともない景色が広がる。
自分の住む町のように、ゴミゴミとしていなくて、自然がたっぷりと
目の前に広がる。
(なんて、素敵なところなのだろう)
生まれて初めて見る風景に…
ここに来て初めて、心が湧きたつのを感じていた。
ガタゴトガタゴトと、馬車が進む。
それを見ているのも、珍しく…車に乗るのとは、まったく別の感覚だ。
早くもなく、自転車のような、速さでもない。
そんな初めての体験も、ふさぎがちだった信子の心を、
ゆっくりと、明るく変えて行った。



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