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第21章 突然の訪問者
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どうしてそうしたのか、彼女にもよくわからない。
王子の使いの者という人は、フロアにある彼女の車椅子に
チラリと目をやると、
「これは、どうも失礼しました」
いともあっさりと、引き下がる。
「だけど、気を付けてくださいね」
ひと声かけると、すんなりと彼女の言葉を信じて、帰って行った。
その間、念のため、物置きに身を隠していたその男は、追っ手の
気配が、完全になくなると
「あんたは、案外優しいんだな」と言った。
「そう?」
「優しいというか…律儀なんだな!」
「そうなの?」
そんなことは、生まれてこの方、言われたことなどない。
どちらかというと「わがまま」「自分勝手」「気分屋」と言われて
きたので…
だけども今回、初めて言われたので、ひどく驚いてしまう。
「でもさ、あんたはどうして、何も言わなかったんだ?」
疑うように、こちらを見る。
「バカ正直に、黙ってて…助けを求めたい、とか思わなかったのか?」
「あっ」
言われるまで、思いつきもしなかった…と逆に驚く。
「なんで?」
「なんでって…」
いきなりそう言われても…もしかしたら逆切れされて、襲われたりしたら、
どうしよう…と、とにかく夢中だったのだ。
でも、どうして助けてもらわなかったのだろう?
自分でも、よくわからない。
男は彼女の顏を、じぃっと見つめると
「ボクのこと、怖くはないのか?」
急に自分の顏を、近付けて聞いた。
「あっ」
あわてて彼女は、後ずさりをする。
黙って、頭を振る…
だが、かすかに、自分の心に、何か変化が起きているのを感じていた。
しいていうならば、その男の目が、あまりにも優しい光りを帯びて
いたからだ。
「ね、あなた…私たちの母さんのこと、何か知ってるでしょ?」
ふいにドリゼラは、聞いてみる。
すると男は、はっ?という顔になる。
「おかしなことも、あるもんだなぁ。
今日は、あんたと同じことを、まさか2階も聞かれるとはなぁ」
先ほどまでの気難しい顔が、クシャリと崩れる。
やはり、そうだったのか!
ドリゼラは不思議に思う…
「それ、たぶん、私の妹よ」
(よく見ると、この人…けっこうイケメンなんじゃあないの?)
いつの間にか、心を動かされていた。
王子の使いの者という人は、フロアにある彼女の車椅子に
チラリと目をやると、
「これは、どうも失礼しました」
いともあっさりと、引き下がる。
「だけど、気を付けてくださいね」
ひと声かけると、すんなりと彼女の言葉を信じて、帰って行った。
その間、念のため、物置きに身を隠していたその男は、追っ手の
気配が、完全になくなると
「あんたは、案外優しいんだな」と言った。
「そう?」
「優しいというか…律儀なんだな!」
「そうなの?」
そんなことは、生まれてこの方、言われたことなどない。
どちらかというと「わがまま」「自分勝手」「気分屋」と言われて
きたので…
だけども今回、初めて言われたので、ひどく驚いてしまう。
「でもさ、あんたはどうして、何も言わなかったんだ?」
疑うように、こちらを見る。
「バカ正直に、黙ってて…助けを求めたい、とか思わなかったのか?」
「あっ」
言われるまで、思いつきもしなかった…と逆に驚く。
「なんで?」
「なんでって…」
いきなりそう言われても…もしかしたら逆切れされて、襲われたりしたら、
どうしよう…と、とにかく夢中だったのだ。
でも、どうして助けてもらわなかったのだろう?
自分でも、よくわからない。
男は彼女の顏を、じぃっと見つめると
「ボクのこと、怖くはないのか?」
急に自分の顏を、近付けて聞いた。
「あっ」
あわてて彼女は、後ずさりをする。
黙って、頭を振る…
だが、かすかに、自分の心に、何か変化が起きているのを感じていた。
しいていうならば、その男の目が、あまりにも優しい光りを帯びて
いたからだ。
「ね、あなた…私たちの母さんのこと、何か知ってるでしょ?」
ふいにドリゼラは、聞いてみる。
すると男は、はっ?という顔になる。
「おかしなことも、あるもんだなぁ。
今日は、あんたと同じことを、まさか2階も聞かれるとはなぁ」
先ほどまでの気難しい顔が、クシャリと崩れる。
やはり、そうだったのか!
ドリゼラは不思議に思う…
「それ、たぶん、私の妹よ」
(よく見ると、この人…けっこうイケメンなんじゃあないの?)
いつの間にか、心を動かされていた。
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