ラストダンスはあなたと…

daisysacky

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第2章  伝説のホテル

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「しぃっ」
 主任はすかさず部下を注意すると、声をひそめて
「どこでお客様が、聞いているかわかりませんよ」と辺りを見回す。

 最近、常連のお客さんに交じって、物見高い若者がやって来るケースが
見受けられるのだ。
たまたま今日は、予約のお客さんが、ほとんどいないので、
閑散としている。
チェックアウトが済み、チェックインの時間までは、まだ2時間ほどの間がある。
こういう時は、次のお客さんを迎えるために、その準備をしたり、
確認作業をしたり、片付けたり、する仕事はたくさんあるのだ。
だがついつい仕事の手を止めて、主任と新人の会話に、耳を傾ける者もいる。

 主任は眼鏡をはずすと、非難するように、後輩を見つめる。
「あなたたち…そういうことを、気にする暇があったら、
 目の前の仕事を、ちゃっちゃと片付けなさい!
 早くしないと、次のお客様がいらっしゃるまでに、片付きませんよ」
ピシリと言い放つ。
「はい」
叱られてうつむく新人と、とばっちりを食らって謝る別の従業員も、
あわてて自分の持ち場へと戻って行く。
「いい?たとえ何があろうと…
 お客様第一でね!」
そう付け加えると、再び眼鏡を掛けなおす。

 それを待っていたかのように、フロントの内線が鳴り響く。
主任は目で、新人に合図をすると、彼はあわてて受話器を手に取る。
「フロントです」
受話器の向こうでは、聞き覚えのある声が響いて来る。
「高岸さんと、かわってくれ」
低音のよく響く声を耳にすると、彼は一瞬戸惑う。
(この人って…誰だっけ?)
しばらく躊躇した後、
「あのぉ~お名前は?」
おそるおそる聞いた。
「はっ?」
相手は、あきれたように聞き返す。
当然、自分のことを知っているもの…と思っているような空気で
息をのんで、待ち構えているのを感じた。
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