ラストダンスはあなたと…

daisysacky

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第5章  謎の肖像画

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  それでもなんと、自分は貧乏くさいのだろう…と、
珠紀は恥ずかしくなってしまう。

 その部屋は、今まで見たことのないくらい立派な部屋だった。
ロビーも素晴らしかったけれど、それと同じか、いやそれ以上に、
ゴージャスな装飾を施された部屋だった。
 真ん中に、ドーンと縦長のディナーテーブルが鎮座している。
その周りにも、木の細工の美しい革張りの椅子が置かれている。
入ってすぐに、大きな柱時計があり、小さな子供が1人は入れそうな
大きさだ。
そうして部屋の端には、中世の甲冑があり、これはレプリカなのか、
本物なのか、見ただけでは全然わからない。
フロントにもあったけれど、ずいぶん重たそうなフォルムで…
もしもさわったりしたら、壊れて崩れ落ちるのでは、と若干ビビるのだった。

 先輩たちがどよめいていたのは、その豪華な料理の数々だった。
見たところ、給仕はなく、セルフサービスで水とか飲み物を
取りに行くシステムのようだった。
かといって、料理が冷めているわけでもなく、まだ湯気の立つ、
暖かな食事の数々だ。
それでもいつの間にかいたのか…部屋の隅には、白いエプロンを
つけた従業員の人がいて、何か困ったことがあったら、
この人に言うようになっているようだった。
 キラキラと光り輝く、シャンペングラスが、ズラリと並べられ…
チョコレートフォンデュも、茶色いシャワーをたぎらせて、壁際に
置いている。
「なんか…すごーい!」
普段は小食の玲も、この時ばかりは、その豪華さに目を奪われていた。
もちろん部屋の各所に、絵が飾ってあり、
高級そうな陶器の入れ物には、他の場所と同様に、
深紅のバラが、こんもりと活けられている。
(ここもバラかぁ~)
このホテルのいたるところに、バラの香りに埋め尽くされて…
その香りと共に、何だか華やいだ気分になっていた。

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