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第10章 思いがけない味方
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男は黙って、こちらを見ている。
(あら?この人…オバサンが、苦手なのかしら?)
珠紀は思いがけず、この男の弱点を見つけたようで、クスリと笑った。
「あら、どうなさったんですか?」
そう言いつつも、オバサンはニヤニヤする。
元気そうですね、よかった、とあらためて珠紀の手をとると
「今日から私が、あなたのお世話をしますね」
男の方を見ると、その女性は宣言してみせた。
「あっ、あぁ」
その勢いに押されたのか、男は目を泳がせて、急にオドオドとしている。
(なんだ、この人、思ったよりも怖くないかも?)
珠紀は急にホッとして、こわばっていた顔を緩ませる。
山内さんと呼ばれるオバサンに、つかまるようにして、
珠紀は立ち上がる。
小柄な割に、思いがけず強い力で引っ張り上げるので、
驚いた顔をしていると…
「だって私、雑用とか、力仕事も散々してますからね」と力こぶを作って見せる。
男は何も言わぬまま、その様子をじっと見ている。
「この人のことは…私が責任を持って、お世話しますから」
そう言うと
「それは頼む」
ようやく彼女に向かって、声をかけた。
するとオバサンは澄ました顔で、
「こっちへ」と珠紀の背中に手を回すと、部屋のドアを開ける。
(うわぁ~何だか久しぶり)
思わず珠紀は、たまっていた息を吐いて、深呼吸をする。
肩に入っていた力が、すっと抜ける。
ほんの数時間前は、中庭を歩いていたというのに…
あまりにも、その落差が大きい。
何だかこれが現実なのか、信じられない気分だ。
「大丈夫よ」
オバサンが耳元で、珠紀にそっとささやく。
「ここはまだ…モニターに映っているから、黙って私について来て」
真面目な顔をしてそう言うと、珠紀の背に手を回したまま、
廊下を歩き始めた。
(あら?この人…オバサンが、苦手なのかしら?)
珠紀は思いがけず、この男の弱点を見つけたようで、クスリと笑った。
「あら、どうなさったんですか?」
そう言いつつも、オバサンはニヤニヤする。
元気そうですね、よかった、とあらためて珠紀の手をとると
「今日から私が、あなたのお世話をしますね」
男の方を見ると、その女性は宣言してみせた。
「あっ、あぁ」
その勢いに押されたのか、男は目を泳がせて、急にオドオドとしている。
(なんだ、この人、思ったよりも怖くないかも?)
珠紀は急にホッとして、こわばっていた顔を緩ませる。
山内さんと呼ばれるオバサンに、つかまるようにして、
珠紀は立ち上がる。
小柄な割に、思いがけず強い力で引っ張り上げるので、
驚いた顔をしていると…
「だって私、雑用とか、力仕事も散々してますからね」と力こぶを作って見せる。
男は何も言わぬまま、その様子をじっと見ている。
「この人のことは…私が責任を持って、お世話しますから」
そう言うと
「それは頼む」
ようやく彼女に向かって、声をかけた。
するとオバサンは澄ました顔で、
「こっちへ」と珠紀の背中に手を回すと、部屋のドアを開ける。
(うわぁ~何だか久しぶり)
思わず珠紀は、たまっていた息を吐いて、深呼吸をする。
肩に入っていた力が、すっと抜ける。
ほんの数時間前は、中庭を歩いていたというのに…
あまりにも、その落差が大きい。
何だかこれが現実なのか、信じられない気分だ。
「大丈夫よ」
オバサンが耳元で、珠紀にそっとささやく。
「ここはまだ…モニターに映っているから、黙って私について来て」
真面目な顔をしてそう言うと、珠紀の背に手を回したまま、
廊下を歩き始めた。
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