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第12章 桜ハウスへようこそ
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「さっきの人は誰?」
2人きりになると、佐伯さんは待子に聞く。
「あっ、さっきの人はねぇ、大家さんの姪御さんということなんだけど…」
振り向きつつ、心底残念そうにもと来た道をすごすごと引き下がる。
もともと…人気な占い師に、ただで見てもらいたい、という魂胆が
あったと待子はにらんでいる。
(案外、チャッカリしてたんだね)
待子は意外な気がした。
「さっきの人ね、マスターのところで、ピアノを弾いているのよ」
部屋に戻ると、早速待子はお茶を入れ直した。
最近は…マスターの見様見真似で、(もちろん豆を挽くところからではないけれど)
コーヒーを入れるようになった。
「へぇ~じゃあピアニストなの?」
ゆっくりとフィルターに、茶色い液体を落としていく。
静かに息を止めるようにして、その瞬間に集中する。
なんともいえないいい香りが、ふわぁと部屋中に立ち上っていた。
「風野さんさぁ」
待子の手元を見ながら、佐伯さんがこえをかける。
こぼさないように、目を離さず、
「待子と呼んで」とあらためて答える。
「じゃあ待子さんさぁ~いつもコーヒーを自分で入れるの?」
おかしな質問だ、と思うけれど、香ばしいニオイに目を細め、
佐伯さんはウットリとした表情で言う。
マスターの入れるコーヒーには、さすがに太刀打ちはできないけれど…
「これね、生ごみのにおい消しにもいいのよ」
ちょっと自慢気に言うと、落とし終わった粉を、キッチンペーパー
で手早くくるんで丸めると、ストンと生ごみのバケツに放り込む。
「夏場はこれで、かなりたすかるかも」
楽しそうに、待子はそう言った。
2人きりになると、佐伯さんは待子に聞く。
「あっ、さっきの人はねぇ、大家さんの姪御さんということなんだけど…」
振り向きつつ、心底残念そうにもと来た道をすごすごと引き下がる。
もともと…人気な占い師に、ただで見てもらいたい、という魂胆が
あったと待子はにらんでいる。
(案外、チャッカリしてたんだね)
待子は意外な気がした。
「さっきの人ね、マスターのところで、ピアノを弾いているのよ」
部屋に戻ると、早速待子はお茶を入れ直した。
最近は…マスターの見様見真似で、(もちろん豆を挽くところからではないけれど)
コーヒーを入れるようになった。
「へぇ~じゃあピアニストなの?」
ゆっくりとフィルターに、茶色い液体を落としていく。
静かに息を止めるようにして、その瞬間に集中する。
なんともいえないいい香りが、ふわぁと部屋中に立ち上っていた。
「風野さんさぁ」
待子の手元を見ながら、佐伯さんがこえをかける。
こぼさないように、目を離さず、
「待子と呼んで」とあらためて答える。
「じゃあ待子さんさぁ~いつもコーヒーを自分で入れるの?」
おかしな質問だ、と思うけれど、香ばしいニオイに目を細め、
佐伯さんはウットリとした表情で言う。
マスターの入れるコーヒーには、さすがに太刀打ちはできないけれど…
「これね、生ごみのにおい消しにもいいのよ」
ちょっと自慢気に言うと、落とし終わった粉を、キッチンペーパー
で手早くくるんで丸めると、ストンと生ごみのバケツに放り込む。
「夏場はこれで、かなりたすかるかも」
楽しそうに、待子はそう言った。
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