桜ハウスへいらっしゃい！

第１２章 桜ハウスへようこそ

２２

「だけど…ご両親と相談してきなさいね」
　大家さんは、その一言を忘れずに付け加えた。
だけど本人は、すっかりその気になっているようだ。

「1番彼女のことを気に入ったのは、なんとあの…中田さんなんだよね」
「中田さんって？」
「いつも朝早く出かけて、夜遅くに帰ってくる人なの。
　だから…ここの住人の人たちのほとんどが、見たことがほとんどないし、
　あんまりよく知らないの」
「ふぅーん」
「いっつも黒い服、来てるの」
「へぇ～」
　ここには杏子は、まだ数えるほどしか、来たことがない。
何しろ学校か、バイト先で十分会うことが出来るからだ。
そんな杏子も、見かけたことがないせいか、今一つ反応が薄い。
「その人…なんでそこにいたの？」
「さぁ～」
もちろん中田さんも、ここの住人な
のだから、何かあったら
相談にのってもいいかもしれない…
待子はそう思う。
だが、まだ何かを隠しているのかもしれない…
中田さんももちろん、歓迎会に参加する権利がある。
それは何ら、のぞきに来ても、不思議なことではないのだけれど…
待子の第6感が、何かに気付いたところだ。、
「私たち住人と、接触するのを極力避けているような人が…
　なんで佐伯さんと？」
なぜ出不精だった人が、こうして堂々としているのか…
とても奇異に思った。