桜ハウスへいらっしゃい!

daisysacky

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第12章  桜ハウスへようこそ

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「ふぅーん」
 杏子も何と答えたらいいのか、返事に困っているようだ。
「何か気になったのかしらね?」
おそらく誰に聞いても、中田さんの詳しい事情を知っている人は、
ほとんどいない。
この下宿の1番古株である、レイコさんでさえ…
「ほとんど会うことが、ないからねぇ」と言葉を濁すのだ。
「いつもね…カラスのような、真っ黒なカッコウをしているの」
その服装には、もしかしたら意味のあるものだったのだろうか?
中田さんは、大家さんよりもよっぽど、魔女のように見えるけれども。

「そいういえば…ここは魔女の館と呼ばれている、という話を
 聞いたのも…確かこの人だったと思う」
…と待子はふいに思い出して、そう言った。
朝早く仕事に行き…終電くらいに、帰ってくる…
もちろんその間、大家さんのところで、お風呂を借りている形跡さえも、
ないのだ…
どうしているのだろう…
純粋に興味があるのだけれど、
「どこかで入ってきてるんじゃないの?」
受話器の向こうで、杏子はひどくサラリとそう言った。
それにしても…そうまでして、なんでこの下宿にいるのか、
待子にはわからない人なのだ。

「もっといいトコに、引っ越せばいいのに」
考えれば考えるほどに、待子はさらに奇妙に感じる。
「だから、何か事情があるんでしょ?」
やはり杏子は、案外スンナリとそう答える。
なんでそこまで気にするのだ、と言わんばかりに。
「でも あの人…何を考えているのかなぁ」
ポツリとつぶやくように、待子が言うと、
「それは本人の好きなように、させてあげれば」
あきれたように、杏子はそう言った。

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