桜ハウスへいらっしゃい!

daisysacky

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第12章  桜ハウスへようこそ

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「なんですか?そんなに大きな声を出して」
 幾分責めるように、待子は言う。
まだ周りの人の視線を、背中に感じながら、佐伯さんの前の椅子を引くと…
いつの間にか、彼女が1人であることに気が付いた。
あれっ、と思い、
「あのぉ、お1人なんですか?」
周りに目をやると、取り巻きの姿を探す。
佐伯さんはキョトンとした顔になり、
「何言ってるの?さっきから、私はずっと1人よ」
おかしそうに笑う。
「あのぉ、さっきの人たちは?」
遠慮がちに、上目遣いで聞くと、佐伯さんはようやくわかったようで、
「あぁ」とうなづいた。
「2人きりで話したかったから…先に行ってもらったわ」
屈託のない笑顔を、待子に向ける。
思わず待子は、パァ~と顔が熱くなり、
そんなのでいいのかしら?
そんなことして、にらまれたりしないかしら…と、かなり気になる。
だけども待子を見つめる佐伯さんの表情が、
あまりにもニコニコとしていて、とても無邪気な、子供のような顔
だったので…まぁ いいかぁ~と、待子はあきらめの境地になる。
ようやく真向かいの席に腰を下ろすと、佐伯さんは、
いつの間に買ったのか、サンドウィッチとサラダとコーヒーの載った
トレーを、目の前に置いた。
チラリと待子の方を向くと、
「買ってらっしゃい!荷物は見ておくから」とニコリとする。
「あっ、私も大丈夫!」と言うと、おもむろに肩にかけていた
生成りのトートバッグから小さな包みを取り出した。
青い花柄のバンダナにくるまれた包みを、トンと机の上に乗せると
唖然とした顔で佐伯さんは見ていた。
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