桜ハウスへいらっしゃい!

daisysacky

文字の大きさ
上 下
292 / 428
第12章  桜ハウスへようこそ

   30

しおりを挟む
「条件付き?何よ、それ」
 そんなこと…自分の時にはなかったよね、と待子は思い出す。
「そう、条件付き」
 だが佐伯さんは、とても涼しい顔をして言う。
「えっ、部屋が空いていないとか?」
「そうじゃないけど…とりあえず1階になった」
「1階?1階って、共同炊事場と外国人の人しか、住んでいないのよ」
もしかして、何も知らないのか、と待子が言う。
「そうみたいね」
ところがすべてを知っている…という顔で、佐伯さんはひどくアッサリと言う。
気にならないの?
待子としては、なんだかひどく嫌な予感がして、
「で、どんな条件?」
興味半分、不安も半分で聞く。
すると佐伯さんは驚いたように、目を丸くして
「えぇっ!本当に何にも知らないのぉ?」
思わず大きな声で、聞き返した。
「うん」
若干恥ずかし気に、待子がうなづくと、佐伯さんはじぃっと
待子の顔を見て
「ここを取り壊すまでの半年間、次を探すまでは…
 住んでもいい、と言われたのよ」
サラリと言ってのけた。
「えっ、なに、それ?」
思わずさぁっと血の気が引くのを感じた。
「何よ、聞いてないわよ!」
思わず待子の声が大きくなる。
そんな予告も、そんな素振りも一切、自分の時にはなかったのに…
あまりにも突然だったので、とうてい信じることなど
出来ないのだ。
自分の耳を疑い、聞き間違えではないだろうか…と思うのだが…
どうやら、自分たちの知らない水面下で、何かが動いている…
そんなことを感じて、思わず身震いをした。

これからどうしたらいいんだろう…
一瞬目の前が、真っ白になる。
一気に足元をすくわれた…そんな気持ちになった。
しおりを挟む
1 / 2

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【毎日20時更新】アンメリー・オデッセイ

ミステリー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:14

やっかいな遺言書。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:285pt お気に入り:3

★チートなんだから三行で説明して!★

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

処理中です...