桜ハウスへいらっしゃい!

daisysacky

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第13章  桜ハウスを守れ!

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  そんなドタバタもありながら、訳ありの佐伯さんの引っ越しが
一段落した後…何事もなく平和な日々が訪れた。
 例えば、金髪のマイコが部屋によじ登ってきたり、
1階のハンさん、ソンさんが、怪しげな食材を買ってきて、
逃げられて、大捕り物をした挙句、それが香ばしいニオイでもって、
「これをどうぞ」と、謎の料理をおすそ分けしに来て…困惑したり、
「洗濯物が、1枚足りない!」と犯人捜しをしてみたり…
それくらいの、たわいもない(?)騒ぎもあったけれども、
おおむね平和な日々を過ごした。
ただ急に、サラ金の男が訪れて来たり、
ブルトーザーが、がぁ~と塀を壊したりするような、
そんなことは、今のところは起こらなかった。

(あら?やっぱりあれは、ガセネタだったの?)
すっかり気を許して、安心して、油断していたある日のこと…
いきなり大家さんの住む、隣の母屋が、その日はやけに
にぎやかしくなり…
「なに?大家さんの占いの結果に、誰かケチをつけに来た?」
思わず窓から、待子がのぞき込んでいた。
「あら、やっぱり何か聞こえる?」
いつのまにか、ガラリと引き戸が開かれ、当たり前の顔をして
マイコがひょっこりと、顔をのぞかせる。
「あれ?バイトはどうしたんですか?」
最近また、バイトを増やした、と聞いていたので、
なんでこんな時間に、ここへ来たんだ?と待子が思わず聞くと
「あ、それはもう、やめたのぉ」
ニヤニヤして、マイコはうたうようにして答える。
「ダメじゃないですかぁ」
あきれたように、待子は言う。
この人は…好きなバンドの追っかけ資金をためるために、バイトを
カケモチするのだが、いかんせん長続きしないのだ。
しょっちゅうツアーを追っかけるのに、その軍資金は、
一体どこから出ているのだ…と、いつも不思議に思うけれども、
「あ、私には、スポンサーがいるんだ」
衝撃的な発言に、一瞬待子は言葉を失うのだった。
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