桜ハウスへいらっしゃい!

daisysacky

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第14章  一時休戦

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「最近 休みが合わないから、ちっとも待子と遊べないんだよね」
 ちょっと不満そうにする杏子だ。
「そんなの」と、少し突き放した顔で、チラリと待子は見る。
「彼氏にかまってもらいなさい。
 私はそれほど…暇じゃないので」
 話しながら、手早くペーパーナプキンを補充すると、さっと席から離れる。
 杏子のように、恋愛をする暇もなければ、お金もないのだ。
今のところは…好いたの、惚れたのという話には、とーんと無頓着で、
さほど興味もない。
何しろ、ひよりちゃんのことと、大家さんのこと、あくせくとバイトを
するのに手いっぱいで…
ちっともそちら方面のことには、中学生にも劣るくらい、ノータッチなのだ。
(だからといって、男性に興味がない、と言ったらウソになるのだが)
 杏子のいる方を、チラリと見た。

 もともと杏子はきれいなのだが、お化粧をして、おしゃれに気を配ると、
さらに輝いて見える。
たとえお化粧をしていなくても、ホルモンの関係なのか…
内から輝いているせいか、同性の待子にも、まぶしく感じる。
羨ましい…というよりも、いいなぁという憧れの気持ち。
何だか自分が、1歩も2歩も、置いてきぼりにされたような気分がした。

 カウンターの方からは、マスターが黙って、こちらを見ている。
何か言いたそうな顔をしているけれど、あえて待子は素知らぬ顔をして、
カウンターに近付くと、
「ホット1つ」と、オーダーの伝票を、そっと乗せた。
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