桜ハウスへいらっしゃい！

第14章 一時休戦

１７

「ね、あなた、ちょっと！」
　いつものように、学校へ行こう…として、自転車を押して、
駐輪場を出たら、いきなり声をかけられた。
気のせい？と思い、振り返ると、知らないオバサンが、母屋の方の
電信柱のところで立って、こちらを見ている。
「はい？」
　誰だろう…この人は、と見返すと、
「あなた、ここの人？」
やはりというか、待子に向かって、話しかけているようだ。

なんだろう？
集金の人？
（いや、集金はまだのはず…というか、銀行引き落としのはずだ）
宗教の人？
（そう言われれば、そのようにも見える）
保険の勧誘の人？
あれこれと考えるけれど、どうも今一つシックリとこない。
ボンヤリとした顔で、立ちすくむと…
「あなた…ここの先生のこと、知ってる？」
といきなり聞かれる。
「先生？」
聞きなれない名称で…誰の事かわからない。
思わず素っ頓狂な声を出すと、その女性は思わず顔をしかめる。
先生って、誰の事？
待子はピンとこないまま、ボンヤリとしていると…
「ねぇ、あなた！本当にここの人？」
疑うような目付きで、その女性は待子のことを見る。
それからようやく…はたと気づいた。
「あぁ～大家さんのことですね？」
　大家さん、と言うと…一瞬その人は、変な顔をしたけれど…
すぐに「そうそう」とうなづくので、ようやく待子もスッキリとする。

　しかし、この人は何者だろう…
　もしかしたら大家さんの副業の方、
（それともこっちが、本職なのか？）
そのお客さんなのか…と、ようやく合点がいった。