桜ハウスへいらっしゃい!

daisysacky

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第15章  いのち短し 恋せよ乙女?

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「あるよぉ、あるけど、自炊もしなくちゃ!」
 待子はマスターの顔を、ボンヤリと思い出す。
きっと交渉すれば、少しは時間を増やしてくれるはず。
「お父さんに、お小遣いとか、もらえないの?」
のんびりとした口調で、杏子は言う。
「うーん、母さんに見つかると…かえって大変だなぁ」
「そっかぁ~」
 杏子は母 淑子のことを、知っているのだ。
もしもばれたら…と思うと、家族全員に火種が降りかかるのが、明らかなので…
これは 全くの問題外だ。

 すっかり散財してしまったので、結局はこの後 服を見る、というのは
今日のところはなしにして、ブラブラとウィンドーショッピングだ。
ショーウィンドーの中は、もう華やかな色彩が踊っている。
「あれ、いいねぇ」
「待子、似合うんじゃない?」
 女友達はこんなことだけでも、十分盛り上がるのだ。
「ソフトもある」
「お腹すいた?」
「あ、じゃあ、たこ焼きでも食べる?
 私がおごるよ」
 チラリと待子の顔をのぞき込んで、杏子が聞くと、
「あ、それ、いいねぇ~」
今度は嬉しそうに、待子ははしゃいだ声をあげた。


「でさぁ~そのオバサンって、どうなったの?」
 先ほどの続き…とばかりに、杏子は聞く。
「オバサン?」
いきなり話を振られたので、ぼぅっとする待子だ。
タコヤキを1つ、ブツッと串にさすと、それをくわえたまま、ボンヤリとする。
「ほら!大家さんのトコに来た、女の人!」
じれったそうに、杏子は串を振り回す。
あぶないなぁ~と横目で見つつ、
「あぁ~あの人ね」とようやく思い出した。
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