桜ハウスへいらっしゃい!

daisysacky

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第15章  いのち短し 恋せよ乙女?

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『いい?私がオトリになるから…
 この信号が赤色になる直前に、左に曲がるのよ!
 その少し行った先に、空き地があるから、
 そのまま全速力で自転車で飛ばして!
 その間に、私がなんとか、アイツを引き付けてみせるわ!』
 果たしてうまくいくだろうか…と思いながら、待子は佐伯さんにささやく。
本当言うと…全く自信がないのだ。
だけど、ためらっている場合ではない。
 もしも相手の狙いが、佐伯さんならば…
もしかしたらうまく、振り切ることが出来るのではないだろうか…と思ったのだ。

『いい?
 その後、合流しましょ!
 佐伯さんはそのまま…公園まで突っ切って、電話ボックスがトイレの近くに
 あるから…その陰に隠れていてね』
そう言うと、目立たぬように、ハンドルにそっと置いた手で、
小さく目の前の信号を指差した。
それからハンドルに、目立たぬように人差し指で、左の方向を
矢印で指し示すと、佐伯さんは黙ってコクリとうなづいた。
目の前の信号が、青から黄色へと変わる。
待子は佐伯さんに向かって大きくうなづくと、
佐伯さんは勢いよく自転車に飛び乗って、そのまま信号の手前を
大きく左に曲がった。
待子はいきなりクルリと後ろに振り返ると、追跡者がいるであろう方向を向く。
待子たちから、少し右斜め後ろの電信柱の向こうから、自転車に向かって
あわてて走り出す、黒い影を目で確認した。
よし!
待子ははぁ~と息を吐くと、覚悟を決めると、大きく手を振って
その男に向かって、駆け出した。


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