桜ハウスへいらっしゃい!

daisysacky

文字の大きさ
上 下
375 / 428
第15章  いのち短し 恋せよ乙女?

   42

しおりを挟む
「でも その人…なんでキミの家を知っているのかなぁ」
 突然クマガイさんが、口をはさむ。
 待子も大きくうなづくと、佐伯さんに注目した。
「あ、あぁ~」と彼女は口ごもると、
「実はねぇ」
急に小さな声になった。
「雨の日にね、家に帰ろうとした時に、傘をね忘れてしまって…
 例によって、あの人が待ち構えていたの」
ポツリポツリと思い出すように、佐伯さんは言う。
「傘を貸してあげましょうって言われて。
 でもよく知らない人だし、断ったら、
 じゃあ送ります、と言われて、しかたなくて…
 途中まで送ってもらったんだけど、
 思えばあれが、いけなかったんだよねぇ」
気の弱そうな顔つきで、ますます佐伯さんはうつむく。
「じゃあ、つけられた、ってことだね?」
ボソリとクマガイさんが言うと、
「うーん」と困ったようにうなる。
「仕方がないよねぇ~
 振り切って、自転車で帰ればよかったんだろうけどねぇ~」
くやしそうに待子が言う。
あんなに近くにいながら、気づかなかった自分のうかつさに。
こうなるまで知らなかった、自分の鈍さに…
するとクマガイさんは、腕組みをしたまま
「いや、うかつに断ると…
 あとが厄介だよなぁ」とボヤく。
するといきなり待子は
「でもさぁ、その人、仕事はどうしてるの?」
急にあることに気付いて、待子はつい、声が大きくなった。 

 だがそれにも気付かないのか、
「まさか、働いていないの?」
ふいに待子が言う。
「さぁ~」
さっき見た限りでは、30代くらいの、フリーターのような印象だった。
「話したこと、ないの?」
「うーん。仕事中だしねぇ~
 ほんの一言、二言よ」
困ったように、佐伯さんは言った。
しおりを挟む
1 / 2

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【毎日20時更新】アンメリー・オデッセイ

ミステリー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:14

やっかいな遺言書。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:285pt お気に入り:3

★チートなんだから三行で説明して!★

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

処理中です...