桜ハウスへいらっしゃい!

daisysacky

文字の大きさ
上 下
381 / 428
第 16章  転がる石のように…

   2

しおりを挟む
「ちょっと、旅に出てた」
 あっけらかんと、サラさんは言う。
まるでちょっと、隣町まで買い物に行ってました、というような口調で。
それがあまりにも自然で、いい感じに、肩の力が抜けた感じだったので
「いいなぁ~」
思わずポツリと、待子は言った。
「あら、なに?
 あなたも旅に行きたいの?」
行けばいいのに、としごく真面目な顔で、サラリと言うので、
スケールが違うなぁ、と待子はあきれる。
「それもあるけど、違いますよぉ」
器が違い過ぎる…と、待子はケラケラと笑った。
「ダメだよぉ、この人は…
 君のような、普通の神経の持ち主じゃあないから」
 いつの間にか、マスターがコーヒーカップを持って、サラさんの前に
カップを滑らせる。
「なになに?私がヘンだとでも?」
「あれぇ?そうじゃないとでも、言うのか?」
「えぇ~っ」
じゃれあうようにして、話す2人を見ていると、何だか自分だけ浮いているように
感じる。
やっぱり2人って…仲がいいんだぁ~
何だか羨ましく見ていると、
「なに?やだ!
 この子何か、勘違いしてるみたいよ!」
いち早く、待子の顔つきに気付いて、サラさんは声を上げる。
「あ~っ、マスターのせいでぇ」
サラさんが、軽くマスターの顔をにらみつける。
困った待子は「あ、あのぉ」
何とか話を変えようと、口を開く。
「大家さんに、佐伯さんのこと…」
ためらうように、待子が言うと、サラさんは「あっ」とつぶやき、
「うん」とうなづく。
「わかった、その件は、伝えておくね」
そう言われてようやく、待子はちょっと安心するのだった。
しおりを挟む

処理中です...