桜ハウスへいらっしゃい!

daisysacky

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第 16章  転がる石のように…

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  この夜はすっかり遅くなり、久しぶりに達成感を感じて、
帰途についていた。
「やりましたねぇ」
 珍しく、サラさんと仲良く自転車を並べて、桜ハウスへと向かう。
「あ、そういえば…クマガイさんが、サラさんによろしくって言っていました」
ハンドルを押しながら、話していると、
「あっ、クマさん?
 そうかぁ~最近、会いに行ってないなぁ~」
サラさんは思い出したように言う。
もともとクマガイさんは、サラさんに紹介されたのだ。
「サラさんって…普段はどんなこと、してるんですか?」
前から聞きたいと思っていたことだ。
思わずツルリと、口から滑り降りた。

 そういえば、この人は…フリーで活動をしている、と聞いている。
でもザックリとした内容で、詳しいことは、まだ何にも聞いていないのだ。
するとサラさんは、「うーん」と考え込むと、何と言おうかと
迷っているようだ。
「えーとね、たいていは出張サービス、っていうのかな?
 結構、いろんなトコから、声を掛けられるのよ、これでも」
少し自慢そうに言う。
「そうなんですか?」
今一つピンと来なくて、まだモヤモヤしている。
「あのぉ」と声をかけると、突然サラさんは立ち止まり、キュッと
眉をひそめる。

「あ、どうしたんですか?」
いきなりサラさんが、怖い顔になっているので、待子がそぅっと
サラさんをうかがうようにして見つめる。
「しぃっ」
 真剣な顔つきで、サラさんは再び歩き始める。
「誰かが…ついてきてる…」
前を向いたままで言う。
「えっ?」
思わず振り向こうとすると、
「ダメ!」
小声だが、ピシャリとした口調で、待子の手を抑える。
「振り返らないで!
 気付かないフリをしましょ。
 刺激したらかえって、危ないわ」
そうつぶやくと、やや足取りを速めて、サラさんは小走りに
ギリギリ信号を渡った。

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