桜ハウスへいらっしゃい!

daisysacky

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第 16章  転がる石のように…

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「いい?そのまま自転車に乗って!
 相手は歩きだから、うまくまけるわ」
 そう言うと、いきなりサラさんは自転車のペダルに足をかけると、
スラリと飛び乗った。
そうして待子の方を振り向き、
「先に帰ってて!私は寄るところがあるから、後で行くわ!」
 そう言うなり、クルリと後ろに向かって方向転換すると、急に
自転車をこいだ。
「えっ」
いきなり1人にされて、待子はうろたえる。
今朝の大立ち回りといい、予想外の出来事ばかり起こるのだ。
あの追いかけっこの後…実は自分の後をつけられていた、というのか…
愕然とする待子は、それでもせっかく追跡をかく乱するために、
サラさんがオトリになってくれた(と思う)のに、
ボヤボヤしていてはいけない、と気を取り直す。
とにかく大家さんに知らせよう、と思い立ち、同じく自転車に
飛び乗った。

 後ろでは「うわぁ」と男の声が聞える。
サラさんが、何かしたというのだろうか?
とても気になるけれど…待子は全速力で、自転車を立ちこぎするのだった。

 後をつけられているのかどうかは、わからない…
 ただ無我夢中で、通りへ飛び出した。
後ろを振り向く余裕もなく…
サラさんはどうなったのだろう、と確かめることもなく、ただひたすらに走る…
次第に、佐伯さんは本当に、大丈夫なのだろうか、と不安になったが、
とにかく助けを求めなければ…と待子は思う。
グンと両足に力をこめて、爆走する。
 するといつもは、20分かかる道のりも、気が付いたらなじみのある場所
にまで来ていた。
「やったぁ~」
思わずカチドキの声を上げる。
何をやった、というわけではないけれど、とにかくやってやったぞ、という
達成感に包まれていた。
それからスピードを落とすと、ようやくホッとして、サドルに腰を下ろした。
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