桜ハウスへいらっしゃい!

daisysacky

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第17章  動き出した歯車

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  おそらくそういう人なのだろう…と、頭ではわかっていたつもりだ。
だけど、母屋での大部屋生活で、それに拍車がかかったようで、
中田さんが、ここに帰って来ない日が続いた。

「どうしたのかしら?」
待子が気にしていると、
「あっ、あの人?心配しなくても、大丈夫よ!」
何だか慣れた様子で、いつものジャージ姿で、レイコさんが言う。
「あの人ね、昔っからそうなの」
「私たちのこと、バカにしているのよ」
バイトに行く準備をしていた、マイコまで顔をしかめる。
「いや、共同生活に、向いてないのよ」
なだめるように、レイコさんが言う。
するとマイコは、クルリとこちらを向いて、
「私はいいけどな!
 そりゃあ、自分の部屋は欲しいけど、みんなと一緒にいるのも、
 なんだか新鮮で、ワクワクするもの!」
嬉しそうに、マイコは目をクルクルと回す。
 この人は、なんでも楽しむのが、得意なんだ…と
待子は見直す思いだ。
 正直 自分は、早く元の生活に、戻りたいと思っている。
1人でのんびりとくつろいで、好きな恰好でダラダラしたい…
と思ってはいるけれど。
こうしてみんなで、ワイワイするのも、なんだか楽しいものだ、と思うのだ。

「まあ、人には人のライフスタイルがあるからね。
 余計な口出しは、しない方がいいわよ」
レイコさんは、年長者の余裕で、2人に向かってそう言った。


 ようやく警察と消防の現場検証が終り…
ひとまず火事騒ぎの喧騒が収まった後…
佐伯さんが荷物を取りに、桜ハウスに戻って来た。
ガタン…と引き戸を開ける音がするので、
どうしたのかなぁと思うと、本人が立っていた。
「災難だったわねぇ」
申し訳なさそうに、佐伯さんがつぶやく。
この日はたまたま、みんなが出払っていたので、広間にはポツンと
待子が取り残されていた。
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