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第17章 動き出した歯車
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しおりを挟む大家さんの小さな台所は、もともと大人数には設定されてはいなかったので、
下宿人たちが集まると、それだけでぎゅうぎゅうになる。
境になるフスマを取り払って、幾分広くはしているものの、
臨時の食堂にしているため、朝になると戦争状態になる。
今でいうところの、過密状態だ。
何しろそこしかないわけだし、大家さん家族も使用する。
もちろんずらして使ってはいるものの、学校や仕事に行く人たちで
どうしても時間がかぶるので…
やはり当番制にして、順番に台所に立つようになりそうだ。
普段は朝食を食べないレイコさんも、いつもだとまだ寝ていたり
するのだけれど…
大広間でみんなで雑魚寝をする生活になってから、否が応でも
早起きになった。
しかも夜も、半ば強制的に消灯されてしまうために、強制的に
朝型生活にされてしまう。
なので自然と、早寝早起きになり、その結果食堂に
人が密集する結果となったのだ。
「なんだか楽しそう!
私たちも、帰ってこようかな!」
火事見舞いに訪れた、ひよりちゃん親子が羨ましそうに言ったけれど…
まだ佐伯さんが、こちらに戻ってこないので
(ストーカーが万が一、早くに釈放されて、来ないかと警戒して)
今まで通り、時折郵便物などのため、ここに往復する日々なのだ。
「このまんま…みんなで暮らすのも、ありかもねぇ」
しみじみとのんきな口調で、レイコさんが言うけれど…
「それだけは ゴメンだわ!」
1人だけ、大広間の廊下の片隅に、ついたてを立てて、じぃっと閉じこもる
中田さんが思いっきり、眉をしかめた。
「私…やっぱりアパートを探そうかなぁ」
ドンヨリとした顔で、中田さんは言う。
元々彼女は、他の住人たちとの交流を、とことん断ってきて、
徹底的に嫌っていたのだ。
大家さんにも、
「あの人のことは、気にしないで」と時折言われていたのだ。
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