桜ハウスへいらっしゃい!

daisysacky

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第17章  動き出した歯車

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  どうやら思ったよりも、桜ハウスの損傷がひどかったらしい。
しばらくは、大家さんの副職である(いや、本職なのか?)
占いに使用している部屋を、待子たち下宿人に提供された。
それに伴い、下宿屋のスタンスも変わった。
半分まかない付きとなり、
「いっそのこと、当番制にする?」
楽しそうに、レイコさんが言いだすくらい、合宿生活のような暮らしが
始まったのだった。
 こういう時だからこそ、大家さんが同じ敷地内の、隣接する建物に
住んでいてくれたことを、本当にありがたいと思う…
不動産屋さんからも、お見舞いがあった。
「さすがにしばらくは…家賃がいただけないわ」
気の毒がって、大家さんが言う。
そうして、少ないながらも、部屋代を1か月分丸々返却された。
「いや、住まわせてもらっているから…払います」
申し訳なくて、待子は申し出たけれども…
「あなたたちが悪くないし、こういうことになったから…
 火災保険も入ってくるから」
ガンとして、受け取らなかった。

 さらに防犯カメラがあったことと、案外近所の人たちの目撃情報の
おかげで、犯人がまもなくして捕まった。
やはり佐伯さんのストーカーである、例のサラリーマン風の男の
しわざであった。
「でもね、一貫して、認めていないそうよ」
 警察から事情を聴いたサラさんが、大家さんに向かって告げるのを
待子も聞いた。
「なんで?カメラにもバッチリ、映っていたんでしょ?」
猛然として、マイコが言う。
「いや、それがね!
 思わせぶりにふるまって、自分を振り回した佐伯さんが悪いんだ、
 と、彼女のせいにしているらしいわ」
「なによ、それ!」
「精神的なダメージを被ったのだから、自分には責任能力がない、
 と言い張っているそうよ!」
いつになく、サラさんは興奮したように言う。
「なによ、それ!」
呆れたようにレイコさんが大きな声で言うと、お茶碗に
白飯を大きく盛りつけた。
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