桜ハウスへいらっしゃい!

daisysacky

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第17章  動き出した歯車

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「佐伯さんが、悪いんじゃあないんだよ。
 誰だって…おんなじだったのかもしれない…」
 待子は一生懸命言葉をつづけた。
 ちがう、
 こんなことを、言いたいんじゃあない…
そう待子は思うけれど、うまい慰めの言葉が、思いつかない。
「いいの、もう…
 母さんにも、家に帰ってこい、と言われたし」
 佐伯さんは、少し疲れ切った表情を浮かべて、弱々しく頭を振った。

「学校でも会えるし。
 またそこでしゃべろう」
そう言うと、彼女は待子に背中を向ける。
何だかとても寂しそうで、やけに小さく見えた。
それから「あっ」と一声上げると
「風野さんもね、早いとこ、新しい所、探したほうがいいよ。
 どうやらここ…壊すらしいから」
いきなり、とんでもない爆弾発言が発射された。
「えっ」
ピクリ…と、待子の手が止まる。
「それ…聞いてないよ」
あのストーカーで騒いでいる間に、未だ母屋で
共同生活を続けているのだ。
それにしても…と待子は思う。
中々、自分たちの部屋を直す気配すら、ないなぁ~と。
気になっているけれども。
顏色を変える待子を見て…思わず佐伯さんは「えっ」と
口に手を当てた。
「なんだ?みんな…とうに知っていると、思っていたのになぁ」
不思議な顔をして、佐伯さんはやけに、強い口調で言った。
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