シンデレラの娘たち

第7章 ただいま、シンデレラ

１

「ユウちゃん、ユウちゃん」
　ゆさゆさと、身体を揺さぶられる感覚がする。
「えっ、なぁに？」
ボーッとした顔で、何とか目をこじ開けると…
いつの間にか、見知らぬ場所にいた。
「えっ？」
　ウソでしょ？
　ここは、どこ？
柚の目に飛び込んできたのは…
小さなコンクリートで出来たカベだった。
「えぇ？」
　なに、これ？
　ここは、どこ？
ここはどうも…柚の家ではなさそうだ。
　まだボーッとして、頭がハッキリしてこない。
「ユウちゃん、大丈夫？」
　今度は、さっきよりも、大きく揺さぶられる。
「誰？ママ？なに？」
寝ぼけた声で、そう言うと
「ユウちゃん、ボクだよ」
その声を聞いたとたん、ようやく柚の頭のピントが、クリアになってきた。

「えっ、ユメ？」
「夢じゃないよ」
　目の前には、さっきまで一緒にいた、ジュンヤの顏がのぞき込んでいる。
「えっ？お姉さんは？王子様は？」
だが、まだ柚の頭は混乱している。
「ここはね、公園だよ。
　ほら、ボクたちが初めて会った公園」
辛抱強くジュンヤが柚にそう言うと、ようやく柚も
「あっ、あぁ～」
じわじわと現実に戻ってきて、冷静を取り戻した。
「ジュンヤくん？」
これは…夢じゃないよね？
ジュンヤに向かって、柚は手を伸ばす。
「何ともない？大丈夫？」
再度繰り返すと、ジュンヤは「うん」とうなづいて、
「ここは…おとぎの国の世界ではないよ。
　ボクたちの住んでいる町だ…」
そう言いながらも、果たして柚に、理解出来るのだろうか？と、
ジュンヤは迷う。

「おうちに、帰って来たの？」
「いや、まだ家には帰っていないよ」
安心させるように、ジュンヤがにっこりと微笑む。
「さぁ、おうちに帰ろう。
　ママが待っているよ」
柚に向かって、声をかけた。