シンデレラの娘たち

daisysacky

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第7章 ただいま、シンデレラ

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「どうやら、無事に帰ったようね」
 水晶玉をのぞき込んで、魔法使いはそうひとり言をつぶやく。
「よかった」
魔法使いの隣に座っていた信子は、ホッとため息をつく。
「だけど…あなたは、いいの?
 このまま…元の世界に戻らなくても」
魔法使いは気遣うように、信子を見つめる。


 産み月までは、あと一か月…
初めてのお産だ。
本来ならば、ボチボチ里帰りをして、出産の準備をするはずなのだが…
「えぇ、大丈夫です」
珍しく、彼女はキッパリとそう言い切る。
「だって、私にはもうここに…家があるのだから」
 気がかりだった、弟のジュンヤにも会った。
もう迷いは、何もない。
「あら、エラだって、帰りたいかもしれないでしょ?」
 だが魔法使いのおばあさんは、今までの二人を見てきた。
これで本当に、正しかったのだろうか…と考える。
だが、信子は頭を振る。
自分が一番、エラのことが理解が出来るはず…と思うからだ。

「私は少なくとも…今の暮らしに、満足しています」
 すっかり体になじんだ、コルセットやドレス。
それにここには、かけがえのない大切な人たちがいる。
信子には今さらもう、この人たちを手放すことは出来ない…
心から、そう思う。
もうすぐ生まれる、新しい生命も…
ここで、精一杯育てていきたい、と真剣にそう思うのだ。

「あなた…すっかり大人になったねぇ」
 水晶玉から顔を上げると、信子に向かって、にっこりと微笑む。
「そんなことはないです」
 ここ最近は、色々と自分なりに、考える時間があった…とそう思う。
「あなたはすっかり、シンデレラになったのね」
魔法使いのおばあさんは、満足そうに信子の姿を見直していた。

 水晶玉には、柚の手をつなぐジュンヤの姿が浮かんでいる。
それを信子は見て取ると、
「幸せになるのよ」
そうつぶやいた。
ジュンヤの歩く道を照らすように、空にはポッカリと、ひときわ
大きな星が、きらめいていた。


    おしまい…
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