ダンナ様はエスパー？

第1章 甘い生活？

１１

「久志さんって、ホント器用よね。
　なんでもこなすし…私よりも、料理がうまいわ」
　そんな彼が…なんで私と結婚したの、と灯里は思う。
「そんなこと、ないよ」
褒められた、と勘違いしているのか、照れくさそうに言いながら…
今度は弁当箱に、オニギリを詰め込む。
「やっぱりね、アカリちゃんがいないとね！」

　それって、褒めているの、微妙だなぁ～
　なんで、こんな優しい人がいるのだろう…
灯里はしみじみとそう思う。
（神様！久志さんと出会わせてくれて、ありがとう！）
心の中で、そうつぶやくのだった。



　新婚家庭が見たい…と久しぶりに親友から連絡があった。
ちょっとはいいとこ、見せなくちゃ！
灯里は朝から張り切っていた。
いつもはお寝坊な彼女も、目覚ましが鳴る前に、パッと起きる。
普段はスヌーズ機能で、5分おきになっても、時計をひっくり返して
しまうくらい、朝は起きられないのだけれども。
久志が優しく揺さぶっても起きない彼女が、この日はバッと
飛び起きたので…本人もかなりテンションが上がる。

（今日は絶対に、失敗しないぞ！）
　気合いを入れて、体を起こすと…
外はまだ、日が昇っていなかった。
傍らを見ると、まだ久志が静かに寝息をたてている。
　こうやって見ると…彼も年を取ったなぁ～
すっかり前髪が後退して、オデコが広がりを見せつつある。
生え際には白髪、オデコにもしわ…
（しみ？）
彼のことをまじまじと観察していると、何だかおかしな気分だ。
（ふふ、何だか気持ちよさそう…）
あんまり見ていると、彼が気が付いて、起きてしまうのではなかろうか…
何だかもったいないけれど、そぅっと音を立てないようにして、
彼女はベッドから滑り降りた。