5 / 28
第1章
5話 本気にならない為に
しおりを挟む「年越してまだ1時間しか経ってないし、もう少し一緒に居たいな。ダメ?」
「ダメ…じゃない」
「アハハ」
そして2人はテグの家に行った。
「何か飲む?」
「じゃ…ビールで」
「まだ飲めるの?ま、いいけど。俺はコーヒー飲も」
「ミニュンって、いい人だね」
「そうだね…マリ、嫌な気分にならなかった?」
「ううん。ただ申し訳なく思った」
「え…」
「ミニュンはテグの事ずっと好きだったのに、私のせいで…」
「マリ…」
「テグはモテるね」
「そんな事ない。もうこの話はやめよう」
「うん。わかった」
「マリって、恋人にどんな事を求めたい?」
「えー、どんな事って?」
「例えば、毎日連絡して欲しいとか」
「特にないよ。お互い好きなら自然でいいと思う。テグは?」
「俺も…そう思う。良かった、同じ考えで」
「私、束縛とかもしないから。それに…」
「それに?」
「私、結婚願望ないから安心して」
「そうなんだ…俺も」
本気になればなるだけ辛くなるから、マリは結婚願望ないなんて言ったけど、テグも同じだと知ったマリは少しショックだった。
「楽しく付き合って行こうね」
「…うん」
そうよ…残りの時間、テグと楽しもう…
マリはそう決め、ビールを一気に飲み干した。
「じゃ、そろそろ帰ろうかな」
「え、もう?」
「眠くなってきちゃった」
「泊まって行けばいいのに」
「え…」
テグがマリに顔を近づけてきた。
マリは思わず顔を背けてしまった。
「マリ…」
「ご、ごめんなさい」
「まだ…慣れない?」
「そんなんじゃないけど…私…帰るね」
「…わかった。ゆっくり休んで」
マリは急いで自分の家に戻った。
一線を超えたらダメ…
本気になればなる程、辛くなるだけ…
でも、毎回避けていたらテグは変に思うはず…
マリはどうして行ったらいいか、わからなかった。
2025年1月5日
テグとはあれから何も起こらないまま、年が明けて5日が経った。
この日22時過ぎにチャイムが鳴り、出てみるとテグだった。
「テグ、今帰ったの?」
「うん。ちょっと出れる?」
「あっ、うん」
するとテグはマリを連れて駐車場へ行き、車に乗せた。
「どこに行くの?」
「ちょっとね」
「いいの?誰かに気づかれたら…」
「大丈夫。今の時間は誰も居ないから」
30分程車を走らせた所で停まった。
「ここ…公園?」
「うん…行こう」
2人は広い公園の中を歩いた。
「すごく広い公園だね」
「でしょ。初めて2人で外を歩くね…」
「そうだね」
しばらく歩くと、大きなベンチがあった。
「え?何このベンチ‼︎すごく大きいんだけど」
「座ろう」
「うん」
2人は巨大なベンチに座った。
「こんなベンチ初めて‼︎インスタ映えしそうだね」
はしゃぐマリをテグはじっと見つめていた。
「どうしたの?」
「こんな時間にこういう所しか連れて来れなくてごめん」
「そんな…謝らないで。仕方ないよ」
「でも…」
「それに、公園でも連れて来てくれて嬉しいよ。このベンチにもすごく感動したし、ありがとう」
「マリ…」
「それより、星がキレイだね!」
「そうだね」
星空を見上げるマリに、テグは見惚れていた。
「私、テグとの思い出は一生忘れないよ」
「え?どうしてそんな事…」
「だって、いつかは別れるでしょ」
「いつか別れるって…」
「それに…2人とも結婚願望ないし」
「、、、、」
「だから…」
「だから?」
「気楽に楽しく付き合って行こうね」
テグは黙ったまま俯いていた。
この付き合いが終われば、私の事はテグの記憶から無くなる…
だから、テグとの思い出は私だけの思い出になるんだ…
マリは必死で涙を堪えた。
しばらく2人は何も喋らず、時間だけが過ぎて行った。
5
あなたにおすすめの小説
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる