38 / 76
38話 すれ違う気持ち
しおりを挟む約束の日曜日、美容室に久美子とジスンを迎えに行ったチスンは、2人を車に乗せて自宅に向かった。
「本当にチスンの家に行くんだね」
「うちがいいんでしょ?」
「うん!!」
チスンのマンションに着きリビングに入ると、部屋中に可愛らしい飾り付けがしてあり、ジスンがはしゃぎまくる。
「これ全部1人でやったの⁈」
「うん。これぐらいしか出来なかったけど」
「チスン、ありがとう!」
テーブルにはたくさんの料理が並べてあった。
「うわー、おいしそー」
「本当に美味しそうだねー。よかったね、ジスン」
「うん!お腹空いたー」
「食べよっか。あ、その前に…」
チスンはケーキを取り出し、ロウソクに火をつけた。
「わーい、ケーキだー!」
「チスン、ケーキまで準備してくれたの?」
「少し早いけど…ジスン、願い事をしながらロウソクの火を消すんだよ」
「願い事?」
「そう。こうなりたいとか、欲しい物とか何でもいいよ」
ジスンは声に出して言った。
「お兄ちゃんがアタシのパパになって、毎日一緒にいられますように」
「ジスン…」
「これがアタシの願い事‼︎」
チスンの目から涙が溢れていた。
「お兄ちゃんどうしたの⁈」
チスンは慌てて顔を隠した。
「何か目に入ったみたい…ちょっと顔洗ってくる。あと着替えてくるよ」
チスンは嬉しさと切なさが込み上げて涙が出てきたのだ。
「ジスン、そんなにお兄ちゃんのことが好き?」
「うん。大好き!」
「でもね、お兄ちゃんはパパじゃないのよ。困らせたらダメ」
「…だってぇ」
そこにチスンが笑顔で戻ってきた。
食事を終え、チスンはジスンにプレゼントを渡す。
プレゼントはパジャマだった。
「かっわいいー!ジスンよかったね」
「うん!お兄ちゃんありがとう‼︎」
「何がいいか分からなかったから、とりあえず今日着て寝るパジャマにした」
「今日?着て寝るって⁇」
「泊まって行って」
「え…」
「やった~!お兄ちゃんと寝れるーっ」
「ジスン、一緒にお風呂入ろっか」
「うん!!」
チスンはジスンを連れて浴室へ行った。
お風呂上がりに着たジスンのパジャマ姿を見て、久美子は思わず笑顔になる。
「クミも入っておいでよ」
チスンはスウェットの上下を久美子に渡した。
「…うん」
久美子は湯船に浸かり、色々考えていた。
私…
何やってるんだろ…
いったい何がしたいの…?
これじゃチスンのこと忘れられなくなる…
3人は前回と同じようにベッドに入った。
ジスンは直ぐに寝てしまったが、チスンと久美子はなかなか寝付けなかった。
「ちょっと飲もっか」
「うん」
2人はソファーに座りビールを飲む。
「今日は本当にありがとう」
「こちらこそ。無理言ったのに来てくれてありがとう」
「そんな…」
「クミ。今も好きだよ、クミのこと!」
「えっ」
「だから幸せになって欲しい。もちろんジスンにも。例えホンユの子でもね」
せめて、クミがホンユと結婚するまで…
俺に出来ることをさせて欲しい…
チスンは心の中で思う。
久美子はグッと涙を堪えた。
「今になって言えるけど、あの時はお互い自分を責めてばかりで…相手に迷惑かけたくないって気持ちが強すぎたよね」
「…うん。そうだね」
「だから別れたんだよね?これからは自分を責めずに後悔しないようにね」
確かにそうだった…
チスンと私は自分より相手優先だった…
迷惑かけたくない気持ちが強すぎて…
結果こうなって…
後悔して…
久美子は改めて思った。
「ホンユとは俺たちみたいになって欲しくないから」
久美子はとうとう涙を流してしまった。
「クミ、どうした⁈」
「何だか…自分が嫌になって…」
「嫌になったって?」
「…本当、自分に腹が立つ…」
涙を流す久美子に、チスンは優しくキスをした。
「ホンユには内緒だよ」
久しぶりのキスに2人はドキドキが止まらなかった。
久美子はチスンの言う通り、後悔しないようにしようと強く心に誓った。
5
あなたにおすすめの小説
年下男子に追いかけられて極甘求婚されています
あさの紅茶
恋愛
◆結婚破棄され憂さ晴らしのために京都一人旅へ出かけた大野なぎさ(25)
「どいつもこいつもイチャイチャしやがって!ムカつくわー!お前ら全員幸せになりやがれ!」
◆年下幼なじみで今は京都の大学にいる富田潤(20)
「京都案内しようか?今どこ?」
再会した幼なじみである潤は実は子どもの頃からなぎさのことが好きで、このチャンスを逃すまいと猛アプローチをかける。
「俺はもう子供じゃない。俺についてきて、なぎ」
「そんなこと言って、後悔しても知らないよ?」
エモパレ ―感情が見えるぽっちゃりな私が、オジさま副局長を無自覚なまま搦め捕るまで―
久乃亜
恋愛
前世の記憶を持つぽっちゃり看板娘ハルネは、
人の「感情の色」が視える魔眼『エモパレ』と、持ち前の経営手腕で、実家の香房を切り盛りしていた。
そんなある日、とある事件から、
オジさま――第二調査局副局長、通称「鬼のヴァルグレイ」に命を救われ、
ハルネの理想のオジさま像に、一瞬で恋に落ちる。
けれど、彼がハルネに告げたのは、愛の言葉ではなく
――理不尽な『営業停止』の通告だった!?
納得いかないハルネは、自らの足と異能で犯人を追い詰めることを決意する。
冷徹で無表情な彼だが、なぜかハルネに同行し、過保護なまでに手伝ってくれて……?
「人生2週目」のポジティブぽっちゃり娘と、不器用な冷徹最強騎士が織りなす、
お仕事×捜査×じれじれの初恋溺愛ファンタジー!
※ 第1部(1~3章)完結済み。 毎日投稿中
課長のケーキは甘い包囲網
花里 美佐
恋愛
田崎すみれ 二十二歳 料亭の娘だが、自分は料理が全くできない負い目がある。
えくぼの見える笑顔が可愛い、ケーキが大好きな女子。
×
沢島 誠司 三十三歳 洋菓子メーカー人事総務課長。笑わない鬼課長だった。
実は四年前まで商品開発担当パティシエだった。
大好きな洋菓子メーカーに就職したすみれ。
面接官だった彼が上司となった。
しかも、彼は面接に来る前からすみれを知っていた。
彼女のいつも買うケーキは、彼にとって重要な意味を持っていたからだ。
心に傷を持つヒーローとコンプレックス持ちのヒロインの恋(。・ω・。)ノ♡
一億円の花嫁
藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。
父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。
もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。
「きっと、素晴らしい旅になる」
ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが……
幸か不幸か!?
思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。
※エブリスタさまにも掲載
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
恋は襟を正してから-鬼上司の不器用な愛-
プリオネ
恋愛
せっかくホワイト企業に転職したのに、配属先は「漆黒」と噂される第一営業所だった芦尾梨子。待ち受けていたのは、大勢の前で怒鳴りつけてくるような鬼上司、獄谷衿。だが梨子には、前職で培ったパワハラ耐性と、ある"処世術"があった。2つの武器を手に、梨子は彼の厳しい指導にもたくましく食らいついていった。
ある日、梨子は獄谷に叱責された直後に彼自身のミスに気付く。助け舟を出すも、まさかのダブルミスで恥の上塗りをさせてしまう。責任を感じる梨子だったが、獄谷は意外な反応を見せた。そしてそれを境に、彼の態度が柔らかくなり始める。その不器用すぎるアプローチに、梨子も次第に惹かれていくのであった──。
恋心を隠してるけど全部滲み出ちゃってる系鬼上司と、全部気付いてるけど部下として接する新入社員が織りなす、じれじれオフィスラブ。
溺愛ダーリンと逆シークレットベビー
吉野葉月
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。
立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。
優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる