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37話 切ない想い
しおりを挟む仕事が終わった久美子は、ジスンを連れて家に帰る。
家の前に停まっていた車の中から誰か降りてきた。
チスンだった。
「チスン⁈」
「お兄ちゃーん!!」
ジスンは久美子の手を離し、チスンに向かって走って行った。
「ジスン!!」
「チスン…どうしてここに?」
「あっ…えっと…ちょっと通りかかって」
久美子はすぐに嘘だと分かった。
「アタシに会いに来たんでしょ?ママがいい子にしてたらお兄ちゃんに会わせてくれるって言ってたから」
「もう…ジスン!」
「じゃあ、ジスンはいい子にしてたんだね」
「うん。だってお兄ちゃんに会いたかったから」
「チスン、どういうこと?もう会わないって決めたのに。この前、最後だからって会ったのは何だったの?」
「…やめた」
「え?やめたって…何で⁈」
「お兄ちゃんの家に行きたい!」
「ジスン!ダメよ」
「クミ…夕食まだだよね?」
「まだだけど…」
「じゃあ、食事に行こう。ジスン何が食べたい?」
「やったー‼︎オムライスが食べたーい」
「よし!じゃ、お兄ちゃんの知ってるお店に行こう」
「ちょっと、チスン!」
「いいから、車に乗って」
お店に着き、テーブル席に座った。
料理が運ばれると、ジスンはチスンの隣でオムライスを食べる。
久美子はチスンの行動が理解出来ず、黙って見ていた。
「ジスン、美味しい?」
「うん‼︎でもお兄ちゃんが作ったオムライスの方が美味しい!」
「ジスン…本当にいい子だねー」
「ジスンねー、もうすぐ4歳になるんだよ」
「もうすぐ⁇え、いつ?」
「来月2日だよ」
「もうすぐじゃん!そっか…」
食事を終え車に乗ると、お腹いっぱいになったジスンは直ぐに寝てしまった。
「チスン、何で家の前にいたの?たまたまじゃないよね?」
「…うん」
「この前はケジメつける為に会ったんでしょ?」
「気が変わった…」
「そんな…勝手過ぎる…」
「悔いのないようにしたいだけ…」
「何…それ…」
「クミ、結構酔ってだけど…途中から覚えてないでしょ?」
「う、うん…本当にごめんなさい。私、何か言ったり余計なことしたりした?」
「…いや、別に」
「本当に?それならよかったけど…」
「それから、ジスンの誕生日…祝ってあげたいんだけど…」
「え、何で?」
「それは…ジスン可愛くていい子だし…まぁホンユ次第だろうけど」
久美子は悩む。
「…ダメかな?」
「ジスンも喜ぶだろうし…わかった。いいよ!」
久美子は断りきれなかった。
「ありがとう!ジスンに行きたいとこと、欲しい物聞いておいて」
「わかった」
2人は連絡先を交換した。
それから2日後、美容室の閉店前に久しぶりにホンユが現れ、店長と話している。
「ホンユさん!久しぶりですね‼︎」
「どうも!久美さんは?」
「今、裏でジスンと帰る支度をしてますよ」
「じゃ、ここで待ちます」
「そういえばホンユさん、聞きましたよ。プロポーズしたんでしょ?」
「は、はい…」
「何をそんなに急いでるんですか?」
「…それは」
「まぁ、でも分かります。ホンユさんはずっと前からクミちゃんのこと好きなんですもんね。応援してます」
「ありがとうございます」
「来週はジスンの誕生日ですけど、お祝いするんでしょ?」
「そのつもりです。その日、久美さんに指輪を渡します」
「えー‼︎そうなんですね‼︎」
その時、帰り支度を終えた久美子とジスンが裏から出て来た。
「ホンユさん‼︎」
「パパ」
「ジスン、元気にしてたか?」
「うん!」
「来週、ジスンの誕生日だろ?どこか行こう!」
「やったー!」
「ホンユさん…その日は…」
「ジスン、どこ行きたい?」
「遊園地ーっっ」
「じゃあ、この前行った遊園地に行こう!」
「わーい!!」
「ホンユさん!」
「じゃ、当日は仕事終わる頃に迎えに来るね。今から仕事だから行くわ」
ホンユは店を出て行った。
「店長、ジスン見てて下さい。すぐ戻って来ますので」
久美子は急いでホンユを追いかけて行った。
「ホンユさん!ちょっと待って下さい‼︎」
「…何?」
「ジスンの誕生日の当日は、ちょっと予定が入ってて…」
「…もしかして…チスン?」
「え…」
「そうみたいだね」
「…はい」
「悪いんだけど会わないで。その日は俺がジスンを祝うから」
「…でも」
「久美さんは今更チスンと会ってどうするつもり?ジスンのこと話してヨリ戻したいの?」
「…別に、そんなこと…」
「じゃあ、会わないで」
「何だか正直どうしたらいいのか分からなくなってきました。こんな気持ちのまま…」
「とにかく来週迎えに行くから‼︎」
そう言うとホンユは車に乗り、仕事に行ってしまった。
久美子が店に戻ると、店長が心配していた。
「クミちゃん、どうしたの?慌ててホンユさん追いかけて」
「実は一昨日、チスンと会ったんですけど…チスンとジスンのお祝いする約束をしたんです」
「え⁈チスンさんと会ったって…もう会わないんじゃなかったの?」
「…そうだったんですが…」
「チスンさんは結局クミちゃんに会ってケジメつけるつもりが、無理だったのね…」
「それは分かりません…」
「先にチスンさんとジスンの誕生日祝う約束しちゃったのね…」
「ジスンが喜ぶだろうし、私も断れませんでした」
「どうするの?ホンユさんにそのこと伝えに行ったんでしょ?ホンユさんは何て?」
「自分が祝うから、チスンとは会わないでって」
「…そっか」
「その日はホンユさんと会います。会ってハッキリしようと思います。こんな気持ちのままホンユさんと一緒にはなれません」
「クミちゃん…」
指輪を渡すとホンユから聞いていた店長は複雑な気分だった。
その日、家に帰った久美子はチスンに電話をかけた。
「もしもし…」
「もしもし…チスン」
「クミ、どうした?」
「チスン、ごめん。ジスンの誕生日…会えない」
「そっか…ホンユと会うの?」
「うん。ごめんね」
「そりゃそうだよな。わかった。じゃ明後日の日曜は?誕生日の2日前だけど」
「…どうして、そこまでして」
「それは…クミの子供だから」
「チスン…わかった。日曜ね」
「ありがとう!ところで今ジスン近くにいる?」
「いるよ」
「行きたいとこと欲しい物聞いてくれる?」
「うん、ちょっと待ってね」
「ジスン、お兄ちゃんが誕生日祝いしてくれるって」
「お兄ちゃんが⁈」
「どこか行きたいところある?」
「お兄ちゃんの家に行きたい‼︎」
「…じゃ、欲しい物は?」
「お兄ちゃん!」
携帯越しに2人の会話が聞こえていたチスンは1人でニヤけていた。
「ちょっとジスン、他にはないの⁈」
「うん!」
「チスン…それが」
「ハハハ、聞こえてたよ。とりあえず明後日は迎えに行くね」
「うん、わかった」
「月曜日は美容室休みだよね?ホンユと会うの?」
「ううん、会わないけど…」
「わかった」
(ママー、お兄ちゃんにおやすみって言いたい!)
「聞こえた?」
「うん、代わって」
「お兄ちゃん、会えるの?」
「うん。日曜日会おうね」
「お兄ちゃん大好き!」
「お兄ちゃんも大好きだよ。おやすみジスン」
「おやすみー」
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