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36話 確信
しおりを挟むこ、これって…
チスンは目を疑った。
「どうしました⁈」
マネージャーも結果を見る。
「ま、まさか⁈チスンさん!!」
チスンは崩れ落ちた。
「チスンさん、大丈夫ですか⁈」
「俺が…俺がジスンの…」
「間違いありません。99.99%一致してるってことは、チスンさんが父親です‼︎」
「そんな…」
「どっ、どうしますか⁈」
「俺、ちょっと行って来る」
チスンは車に乗り、急いで久美子の店に向かった。
俺がジスンの父親…
ジスンの…
疑ってはいたけど、実際に自分が本当の父親だと分かり、居ても立ってもいられなくなったチスンはジスンを一目見たくなったのだ。
その頃、美容室にはホンユが来ていた。
休憩室でジスンに本を読んであげている。
店内では店長と久美子が片付けをしながら話している。
「2連休はゆっくり出来た?」
「はい。二日酔いで1日は潰れちゃいましたけど…」
「そんなに飲むなんて、よっぽど楽しかったのね」
「帰りの記憶がほとんどないんです…」
「アハハ。でもまさかチスンさんと飲みに行くとはねー。ホンユさんもよく会わせたよね」
「最後だったから。もうチスンとは会わないし。だから忘れます」
「そっか…わかった。もうすぐお昼だしホンユさんとジスン連れて食事しに行って来なよ。ここの近くの店、この間行ったら美味しかったよ。歩いて行ってくれば?」
「じゃ、そうしますね!」
チスンが美容室の近くに着いたころ、ちょうど久美子とジスンとホンユの3人が手を繋いで店から出て来た。
3人の姿を見たチスンは、どうすることも出来ず遠目にただ見ているだけだった。
ジスン…
何でもっと早く気付けなかったんだ…
悔しくて力任せにハンドルを何度も叩いた。
その日の夜、チスンはホンユを呼び出した。
「急にどうしたんだよ」
「…話があって」
「怖い顔してどうした?話って?」
「ごめん。お前との約束…守れそうにない」
「約束って…もしかしてもう久美さんと会わないって約束のこと?」
「ああ。この前最後だからって言って会わせてくれたのに、ごめん」
「何でだよ‼︎お前が最後だって言ったから渋々会わせたのに!ダメだ!!」
「ホンユ…何でだよ」
「こっちが聞きたいよ‼︎」
「何で嘘ついた⁈」
「嘘って何だよ?」
「ジスンのことだよ」
「え…」
「お前の子供じゃないだろ」
「ま、まさか…この前久美さんと会った時、久美さんが何か言ったのか⁈」
「クミは何も言わない」
「じゃ…何で…?」
「クミは絶対に浮気なんかしないから」
「だから、俺と久美さんはお前たちが別れた後からだって言っただろ!」
「クミが俺を忘れきれなかったから、しばらくしてから付き合ったんだろ?」
「ああ、そうだよ!」
「ジスンは今年で4歳になるんだろ?俺たちは3年前に別れたんだよ‼︎」
ホンユはハッとする。
「どう考えても合わないだろ。俺とクミが付き合ってる間に、お前とクミに何かない限り…」
「ほっ、本当は…お前たちが別れてすぐ、俺と付き合う前に久美さんには彼氏がいたみたいで。その相手との子供…なんだ…」
ホンユはとっさに嘘をついた。
「…そんなに俺とクミを離れさせたいんだな」
「え…?」
「調べたんだ…」
「調べたって…?」
「DNA鑑定した。俺とジスンの」
「え…」
「俺との子供だったよ…」
ホンユは拳を握りしめた。
「何も知らずに俺は…」
「そうだよ!お前の子だよ!だから何だよ。ヨリ戻すつもり?久美さんはそんなこと望んでないし、ジスンは俺を父親だと思ってる」
「ホンユ!お前…」
「結局、久美さんは浮気するような人じゃないって信じてたって言いたいんだな。でももう遅いよ。俺、久美さんと結婚するから。久美さんとジスンは俺が幸せにする」
「クミとジスンが幸せならそれでいい…お前だったら安心出来るし。クミには俺が知ったことは言わないよ」
「…チスン」
「久美が俺とヨリ戻すつもりがないのは分かってる。だからジスンのことも言わなかったんだろうし。ホンユと一緒になって2人が幸せになるなら、それは何よりだし…ただそれまで、その日が来るまではクミとジスンには会うから」
ホンユはこれ以上、チスンに何を言っても無理だと思った。
「勝手にしろ」
「ああ」
2人の話は終わった。
焦ったホンユはそのまま久美子の家に向かった。
「ホンユさん、こんな時間に…」
「遅くにごめん。ジスンは?」
「もう寝てますよ」
「そっか。起こしちゃいけないからここで話すよ」
「何かあったんですか?」
「もう待てない。結婚しよう」
「え⁈ちょっ、ちょっと待って下さい‼︎いきなりどうしたんですか⁈」
「付き合ってもいないのに結婚なんて順番間違ってるけど、もう関係ない‼︎早く久美さんと一緒になりたい。早く俺のものにしたいんだ!」
「そ、そんな…いきなり言われても…」
「ジスンの為にも早く一緒になろう!」
「そ…そんな…」
「式は後から挙げて入籍だけでも」
「私の気持ちは?どうでもいいんですか⁈」
「…俺とは嫌?」
「そうじゃなくて…」
「俺は絶対に悲しませたりしない」
「…ホンユさん?」
「何?」
「少し考えさせて下さい」
久美子はそう言うと玄関を閉め、中に入って行った。
ホンユは久美子がチスンの元に行きそうで怖かった。
翌日、夕方になってもホンユは美容室に来なかった。
「ジスン、おとなしく座って絵本見ててねー」
「うん。ママがいい子にしてたらお兄ちゃんに会わせてくれるって言ったから、いい子にするんだー」
「あっ、そうなの?」
「そう言うしかなかったんです」
「ところで今日はもうホンユさん来ないのかな」
「…それが昨日…」
ホンユから言われたことを店長に話した。
「とうとうプロポーズしてきたのね‼︎でも入籍だけでも。って…何をそんなに急ぐんだろうね。クミちゃんはどうなの⁇」
「いきなり結婚は…」
「でも、もう付き合うも結婚するのも一緒じゃない?ジスンもいるし。私はいいと思うけどなぁ。なかなかホンユさんみたいな人いないよ。イケメンだし、お金には困らないし…子持ちでもいいって言ってるし」
「…よく考えてみます」
わかってる…
わかってるけど…
なかなか前に進めない久美子だった。
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