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50話 思い出の場所
しおりを挟むその日の夜。ジスンが寝た後、チスンと久美子は久しぶりに2人で話した。
「この3日間どこに泊まってたの?」
「事務所の近くのホテルだよ」
「そっか…ごめんね」
「俺の方こそ、ごめん」
「ジスンにはパパは出張って言ったけど、すごく寂しがってた。私も眠れなかった」
「クミ、今大事な時期だからお腹の子の為にもストレス溜めないようにしよう」
「…うん」
「それから美容室だけど…しばらく休んだら?」
「…うん。明日店長に相談してみる」
「もし休むことが出来たら、明後日3人で旅行に行こうか」
「旅行⁈行きたい!どこ行く?」
「済州島に行こう」
「え…」
「嫌な思い出のままの場所になってるから、もう1度行っていい思い出にしたい…」
「チスン…うん、わかった」
翌日、久美子は店長に相談しに店に顔を出した。
「クミちゃん、おはよう」
「おはようございます」
「何か久しぶりだね。ゆっくり休めた?」
「はい。ご迷惑をおかけしました」
「体調は良くなったの?まだ顔色が良くないよ」
「店長…実は私、妊娠したんです」
「えーっ‼︎本当に⁈キャー!おめでとう!!」
「ありがとうございます!」
「今どのくらい?」
「まだ5週目くらいです」
「そっか。じゃ気をつけないとね」
「報告が遅れてすみません。色々あり過ぎて…」
「え…色々って?」
「ちょっと…でももう解決したので」
「そ、そうなの⁈じゃあチスンさんとは上手くいってるんだね?」
「はい!」
「よかった!結婚は?」
「お互いの両親に会ってからですね。でも近いうちにすると思います」
「そっかぁ‼︎2人目の子供も授かって、クミちゃん幸せだね!」
「はい!店長…それで相談なんですが…」
「仕事のこと…だよね?」
「は、はい」
「子供産んで落ち着いて、また働きたくなったら戻っておいで。クミちゃんならいつでも大歓迎よ」
「店長…」
「体が1番大事だからね。先ずは元気な赤ちゃん産んでね!あ、それから結婚式には必ず呼んでよね♡」
「店長…ありがとうございます」
久美子は店長に心から感謝した。
翌日、3人は済州島に行った。
チスンの別荘に着くと、嬉しくてジスンは走り回る。
「ジスン、転ぶなよ」
「ジスン、嬉しそう!」
久美子はベッドルームに入った。
布団はめくれたまま、テーブルにもグラスが置きっぱなしで、あの日のままの状態だった。
「あっ、これは…その…」
久美子は黙って布団を整え、テーブルを片付け始めた。
チスン…
わかってるよ…
あの日、片付ける気力なんてなかったんだよね…
私のせいで…
ごめんね…
久美子は昔を思い出し、必死に涙をこらえて片付けた。
3人は夕食の買い物に行き、その後は海で遊んだ。
ジスンにとって、初めての海。
ジスンはチスンと水の掛け合いをしてはしゃいでいる。
あの時はここで別れたけど、今は違う…
これからはこの子と4人で幸せになるんだ…
嫌な思い出の場所から、楽しく幸せな思い出に変えよう…
久美子は砂浜に座り、はしゃぎ回る2人を眺めながらそう思っていた。
チスンが久美子の元に走って来た。
「クミ、寒くない?」
「うん、大丈夫!」
「そろそろ部屋に戻ろうか」
「そうだね」
「ジスンー、行くよー‼︎」
チスンはジスンを抱え、3人は別荘に戻った。
夕食を終えると、遊び疲れたジスンは直ぐに寝てしまった。
チスンと久美子は庭に出た。
「前にここで、チスンは私の指を触ってサイズの確認したでしょ?」
「えっ…バレてたの?」
「あの時は分からなかったけど、あの日ソウルに戻ったらプロポーズするつもりだったって聞いた…」
「そ、そっか…」
「今まで色々あったけど、分からないままのことが多かった気がする…真実を知るって本当に大事だよね…」
「そうだね…」
「私…今すごく幸せだよ」
「俺もだよ」
「この子の名前、どうする?」
「考えてたんだけど、女の子だったらチスンとクミの文字を取って…スンミは?」
「スンミ!いいと思う‼︎じゃ、男の子だったら…ミスン!はどう?」
「ミスン…いい名前だね!じゃあ女の子だったらスンミで、男の子だったらミスンにしよう‼︎」
「うん!決定~‼︎どっちかなー。でも元気に生まれてきてくれたらどっちでもいいな‼︎」
「そうだね」
そう言うとチスンは上着を脱ぎ、久美子の肩にかけた。
「ありがとう」
「来週末、日本に行こう。クミのお母さんに会いに」
「来週⁈うん、わかった。伝えておく」
「反対されたりしないかなぁ…」
「大丈夫だよ!逆に大喜びすると思うよ」
「本当⁈」
「うん!それを言うなら私の方が心配だよ。チスンのご両親から反対されそう」
「うちも大丈夫。ああ見えて受け入れる人だから。それにクミのこと気に入ると思うよ」
「それ聞いて安心した」
「今月中に記者会見も済ませたら…」
「済ませたら?」
「来月中に式を挙げよう」
「式⁈」
「やっぱり式は挙げよう。お腹が大きくなる前にクミにドレスを着させたい‼︎…イヤ?」
「ううん。すごく嬉しい‼︎」
「ジスンにもドレス着させて。可愛いだろうな~。たくさんの人に祝福してもらおう」
「チスン…ありがとう!」
チスンはポケットから何かを取り出した。
「クミ…手出して」
手を出すと、左手の薬指に指輪をはめた。
「もっともっと幸せになろうね」
久美子は嬉しくて涙が止まらなかった。
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