真実【完結】

真凛 桃

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52話 祝福

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翌日、3人はチスンの実家へ行った。


「着いた。ここだよ」


嘘でしょ…すごい豪邸!!

久美子は急に不安になってきた。


「ママー、すごいお家だねー!」

「そ、そうねー」


門を開け中に入ると家政婦がリビングまで案内してくれた。

リビングにはチスンの両親がソファーに座って待っていた。 


「おお、チスン来たか」

「チスン」

「紹介するよ。こちら今お付き合いしている久美子さん」

「は、初めまして…じゃなく。すみません、こんにちは。久美子と申します」


チスンの両親は、以前病院で会ったことを思い出し驚く。


「あなた、確かホンユさんの彼女じゃ…」

「違うんだ…ホンユはあの時、クミに気を遣って言ったことなんだ…」

「え…?そ、そうだったのか⁈」

「じゃあ、あの時チスンが病室で私たちに会わせたい人がいるって言ってたのは…この方?」

「うん…色々あって会わせるの遅くなってしまったけど…」


チスンの母が、久美子の後ろに隠れているジスンに気付く。


「えっ?その子は?」

「あ、この子は…ジスン、おいで」


ジスンは恥ずかしそうにチスンの横に来た。

「この子はジスン。俺とクミの子供だよ」

「えーっ⁈お、お前いつの間に⁈」

「あっ、あなたたち子供がいたの⁈どうして今まで言わなかったの⁈」

「本当に申し訳ありません。色々ありまして」

「色々って…そ、そんな…」

「まあ、座りなさい」


5人はソファーに座り、チスンが今までのことを全て正直に話した。

両親は頭を抱えた。


「お、お前…じゃあ、あの事件はストーカーを捕まえる為に仕組んだってことだったのか⁈」

「…うん。ごめん」

「それで、チスンの負担になると思って久美子さんから別れを切り出して…その後は1人で子供を産んで1人でここまで育ててきたってことなのね…」

「…はい。すみませんでした…」


すると母親が久美子の隣に座り、久美子を抱きしめた。


「え…」

「ごめんなさいね。1人で大変だったでしょ?私たち、何も知らずに…」

「…母さん」

「いえ、とんでもないです…」

「チスンには呆れたぞ。もうバカなことはするなよ!」

「わかってる…」

「ジスンだっけ?おいで」


母親はジスンを自分と父親の間に座らせた。


「まぁ、何て可愛いの⁈ねぇお父さん」

「そうだね。久美子さん似かな」

「ジスン!ジスンのおじいちゃんとおばあちゃんよ」

「おじいちゃん…おばあちゃん…」

「おー、ジスン。おじいちゃんだよー」

「私の可愛い孫…」


ジスンは緊張が解けて甘え出した。

久美子もチスンの両親がすごくいい人で安心した。


「お父さん、お母さん」

「何だ?」

「どうしたの?改まって」

「結婚…許してくれる?」

「何言ってるんだ。当たり前だろ」

「そうよ!今まで色々あって、ここまで来たんだから…幸せにならないと‼︎」

「お義父さん、お義母さん、ありがとうございます」

「ありがとう。来月、式を挙げようと思う」

「来月⁈じゃあアメリカから帰ったら忙しくなるわね」

「そうだな!」

「俺たち4人で幸せになるよ!」

「4人?」

「3人だろ?」


久美子がお腹を触る。


「えっ、まさか」

「そ、そうなのか⁈」

「まだ5週目ですけど」
 
「そうなのね‼︎今日は本当に嬉しい報告ばかりね!!」

「そうだな‼︎」


チスンの両親は想像以上に喜んでくれた。



「ジスン、また遊びにおいでね」

「ジスン、今度おじいちゃんと遊ぼうね」

「うん♡」

「久美子さん、体に気をつけるのよ!」

「はい。ありがとうございます」

「じゃあ、また。父さん、明日は気をつけて!」

「おう。わかった」



3人が帰り着いてしばらくすると、チャイムが鳴った。
玄関を開けると、スジンが立っていた。


「スジンさん!!」

「よっ!」

「どうしたんですか⁈」


スジンは持って来たお寿司を見せ、リビングに入った。


「スジンさん⁈え?どうして⁈」

「久しぶり!夕食まだだろ?お寿司買って来たよ」


するとジスンが素早く反応し、スジンの元に走って来た。


「うわー!お寿司だぁ‼︎」

「この子かー!お前たちの子供‼︎」

「はいっ」


久しぶりに会うスジンに、久美子は戸惑う。


「どうぞ座って下さい」


4人は座ってお寿司をつまむ。


「ホンユから聞いてたんだ。子供のこと」

「そうですか」

「聞いてた通り、可愛いな~」

「ところで今日はどうしたんですか?」

「うん。ちゃんと祝いたくて。久美ちゃんとも、あれっきりだったから」

「す、すみません…」

「まぁ、フラれたから仕方ないんだけどね」

「スジンさん…その話はもう…」

「そうだな。それより、お酒ないのか?」

「あっ、ワインでいいですか?」

「うん」


スジンの分だけワインを出した。


「え?俺だけ?お前らも飲めよ!」

「それが…今、クミ妊娠中なんです」

「えっ⁈そうだったのか!いや~おめでとう‼︎2人目かー!よかったなー!!」

「はい‼︎ありがとうございます!」

「それで、チスンは気を遣って飲まないのか!お前ってやつは…」

「チスン、飲んでいいよ。ずいぶん飲んでないでしょ?」

「そうだけど…」

「ほら、お前も飲むぞ。俺1人で飲ませるなよ」

「は、はい…」


チスンは久しぶりに飲んだ。


「ママー、このおじさん誰?」

「パパの知り合いよ」

「おじさんじゃなくて、お兄ちゃんね!」

「どう見てもおじさんでしょ」

「そうかなー?年齢より若く見られるんだけどな~」

「アハハ」

「キャハハ!おじいちゃん‼︎」

「お、おじいちゃん⁈そんなに老けて見えるかぁ⁈」

「ジスン、おじいちゃんはないだろ~」

「いや~参ったな~」


みんなの笑い声が部屋中に広がった。


22時を回り、ジスンはいつの間にか寝てしまった。


「もう22時か。そろそろ失礼しようかな」

「はい。ご馳走さまでした」

「美味しかったです。ありがとうございました」

「どういたしまして」


玄関で靴を履くとスジンは立ち止まり振り返った。


「チスン、久美ちゃん。幸せにな。今までの分まで、たくさん幸せになれ!」

「スジンさん…ありがとうございます!」

「お前ら、悔しいほどお似合いだよ」

「…スジンさん」

「じゃあな。結婚式、必ず呼んでくれよ!」


そう言って帰って行った。




翌日、チスンはマネージャーと打ち合わせの為事務所に行った。


「チスンさん、お疲れ様です」

「お疲れ」

「早速ですが、ドラマの依頼が来ました。どうします?」

「最近ドラマ終えたばかりなのに、もう?」

「はい。チスンさんがハマり役だと、キム監督が…」

「キム監督が⁈」

「はい。チスンさんはキム監督のこと信頼してるでしょ?それにラブシーンは一切無しです」

「本当に?そのドラマはいつから撮影入る予定?」
  
「来月半ばからのようです。チスンさんは医者役ですよ!」

「半ばだったら、月初めに式挙げれば大丈夫か…」

「式って…結婚式ですか⁈」

「うん。マネージャーも来てね」

「式、挙げられるんですね!是非行かせてもらいます。じゃあ、キム監督にOKの返事しておきますね」

「うん。あ!あと再来週、会見の場所を押さえておいて!」

「え?会見って…もしかして」

「結婚会見する!」

「分かりました!再来週はチスンさんの話題で世間は持ちきりでしょうね~」

「後、何もないなら…帰るよ」

「あ、はい。お疲れ様でした」


チスンが事務所を出ようとすると、マネージャーが走って来た。


「渡すの忘れてました!これ、この前の健康診断の結果です」

「あ、ありがとう」


チスンは車に乗り診断結果を確認すると、要検査と書かれてあった。


E判定って…1番悪いじゃん…


チスンは深刻に考えず、ホンユに電話を入れると買い物をして家に帰った。



「ただいまー」

玄関のドアを開けると、ジスンが飛びついてきた。


「パパー!おかえりー」

チスンはジスンを抱きかかえる。


「チスン、おかえり!」

「クミ、ただいま!」

「買い物して来たの⁈」

「うん。今日は俺が作るから」

「本当に⁈ありがとう♡」

「やった~パパの料理~」


1時間後、チスンの手料理がテーブルにズラリと並ぶ。


「え…こんなに作ったの⁈多すぎじゃない?」

「ホンユを呼んだから」
 
「ホンユさん⁈え?どうして?」

「色々あったけど、クミと出会えたのも元はと言えばホンユのおかげだし、ジスンのことでもあいつには世話になったしね。式にも来てもらいたいし…その前にちゃんと会って話しておきたくて」

「そうだね…」


久美子は久しぶりにホンユに会うのは気まずかったが、チスンの言う通りだと思った。


30分後、ホンユが来た。


「久しぶり!」


ホンユは久美子と目を合わさずに挨拶した。


「あー‼︎お兄ちゃん」


ジスンは以前ホンユのことをパパと呼んでいたが、今日は言わなかった。


「ハハハ、お兄ちゃんか…ジスン久しぶりだなー!元気だったか?」

「うん!」


4人で食事を始める。


「チスン、何か大変だったらしいな」

「え?何が?」

「ドラマだよ!」

「ホンユ…その話はちょっと…」

「あっ、ごめん」

「いいですよ。終わったことだし」

「だよね!」


この日、初めてホンユは久美子と目を合わせた。


「それより、スジンさんから聞いたよ!2人目が出来たんだって⁈」

「はっ、はい‼︎」

「おめでとう!」

「ホンユ…ちゃんとお礼言ってなかったけど、今まで色々とありがとう。感謝してるよ」
    
「え?俺、何も感謝されることしてないけど」

「してるよ。ジスンの面倒見てくれたり、クミがケガした時に病院に連れて行ってくれた。クミにも色々手助けしてくれただろ」

「あと、ジスンが熱出した時だって急いで来てくれて、病院に連れて行ってくれましたよね」

「…そ、それは」

「本当に感謝しています」

「そんな感謝なんて…好きでやったことだし」


その時チスンの携帯が鳴り、別の部屋で電話に出た。


「ホンユさん…あの時はあんな別れ方をしてごめんなさい」
 
「別にいいよ。久美さんを振り向かせられなかった俺が悪い…」
 
「え…」

「でも、よかったね。久美さんすごい幸せそう」

「はい…幸せです」

「チスンは一生大切にしてくれるよ。今だから言えるけど、チスンなら安心だよ」

「はい…」

「ジスンも幸せ?」

「うん!パパとママがいるから!」

「何だか妬けちゃうな~」



別の部屋に行ったチスンの電話は、病院からの連絡だった。


「チスンさんですか?私◯◯病院の脳神経外科のソンと申します」

「あ、はい。お世話になります」

「健康診断の結果はご覧になりましたか?」

「…見ましたが」

「明日にでも再検査に来て頂きたいのですが」

「今までの結果で要検査あっても再検査はしてないんですが…特に症状はないし、行かなくちゃいけませんか?」

「今回は必ず検査して下さい。早い方がいいので明日時間作って下さい」  

「わかりました…」


早い方がいいって…どこか悪いのかな…


電話を終えたチスンはリビングに戻った。


「会社から?」

「う、うん」


久美子が心配しないように、病院からだとは言わなかった。


それから2時間経ち、ホンユが立ち上がった。


「じゃ、俺そろそろ帰ろうかな」

「ホンユ、今日は来てくれてありがとう」

「ありがとうございました」

「来月、式挙げるんだろ?」

「うん。ホンユも来てくれるよね?」

「しょうがないな。行ってやるよ!」

「お兄ちゃん、バイバーイ」

「ジスン、バイバイ!またね!」






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