真実【完結】

真凛 桃

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53話 思わぬ結果

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ホンユが帰った後、3人はシャワーを浴びベッドに入った。


「ホンユさん、元気そうでよかった」

「そうだね」

「ジスンはちゃんと、お兄ちゃんって言ってたね」

「だって、ジスンのパパはここにいるもん」

ジスンはチスンを見て言った。

「ジスン…おいで」


チスンは久美子の方まで腕を伸ばし、2人を腕枕した。


「チスンの腕、暖かい…ね、ジスン」

ジスンは安心して眠っていた。

「ジスンったら…いつの間に」

「こうやってジスン見てると、やっぱり俺に似てるのかな」

「うん。確かに。目なんかそっくりよ!」

「クミ、そう言えば来月の半ばからドラマの撮影入るから」

「…え。もう?」

「ラブシーンは一切ないから。医者役」

「本当?じゃあ始まったら観る‼︎チスンの医者って…カッコいいんだろうな~楽しみ!」

「だから式は来月半ばまでに挙げよう。そろそろ場所も押さえないとね」

「うん。楽しみ‼︎」

「クミのドレス姿、キレイだろ~な~」


そう言うとチスンは久美子のおでこにキスをして眠った。



翌日、チスンは病院に行った。

特別ルートから先生の部屋に入る。


「チスンさん、どうぞこちらへ座って下さい」

「はい」

「今日、早速検査させて頂きたいんですが…結果まで含めて3時間くらいかかります」

「そんなに?先生、自分はどこか悪いんでしょうか?」

「脳に少し出血らしき物が見えたので、今日はMRI検査します」

「出血…?」

「まだ今は何とも言えないんですが、脳なので検査は早めにした方が」

「…はい」


検査が終わり、先生の部屋で待たされていた。

しばらくして先生は険しい顔をして椅子に座った。


「先生…?」

「こちらご覧下さい。右が正常な人の脳で左がチスンさんのです」

「え…これは…」

「腫瘍が4個あります」

「…ガンってことですか?」

「…はい。悪性脳腫瘍です」

「悪…性…?」

「…はい。病体が1個であれば手術出来るんですが、チスンさんの場合4個あるので手術が難しいんです」


チスンは言葉が出なかった。
 

「今まで原因不明の熱が出たり、疲れやすくなるようなことはなかったですか?」

「そう言えば…ありました…」

「せめて、去年検査していれば…」

「自分は、長くないんですか…?」


先生は黙っている。

「先生、はっきり言って下さい」


先生は深呼吸し、口を開いた。


「半年…長くて1年です…ただ長くて1年というのは、抗がん剤治療した場合です」

「長くて1年…?」

「何もしないよりも抗がん剤治療した方がいいんですが、副作用で脱毛や体力低下、あと記憶がなくなったり、物忘れしやすくなったりする可能性があります…」
  
「近いうち、ご家族の方と一緒に来られて下さい。今後のことを話しましょう。後お酒やタバコは症状が悪化しますのでやめて下さい」


チスンはショックが大き過ぎて、先生の言葉が入ってこなかった。

「薬を出しますので、毎日飲んで下さい」


薬をもらったチスンはしばらく車の中で考えていた。


まさかガンだなんて… 
治療しても物忘れしやすくなったり…
記憶がなくなっていく…

クミやジスンのこと忘れていくなんて無理だ…
いずれにしても、俺は長くないのか…


チスンはどうしたらいいか分からなくなっていた。


気持ちを落ち着かせてマンションに帰った。


とにかく病気のことは忘れよう…
じゃないとクミとジスンの顔をまともに見れなくなる…

そう決めて玄関のドアを開けるとジスンが駆け寄って来た。


「パパー、おかえり!」

「ジスン…ただいま」


手を繋いでリビングに行くと、久美子は夕食の準備をしていた。


「チスン!おかえり!!」

「う、うん…先にシャワー浴びて来る…」


久美子とジスンの笑顔を見たチスンは、耐えきれなくなった。

 






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