真実【完結】

真凛 桃

文字の大きさ
54 / 76

54話 生きたい

しおりを挟む

3人は食卓を囲む。


「今日、マネージャーさんと打ち合わせだったの?」

「…うん」

「マネージャーさんも今度、家に呼ぼうよ」

「そうだね…」

「来週、私の実家に行くの金曜日で大丈夫?」

「…もしかしたら急な仕事が入るかも知れない。来週には分かるから」

「そうなの?わかった…」

「パパ、なんだか元気ないよー」

「えっ?そうかなー。元気だよ」

「パパはお仕事だったから疲れてるのよ」


ジスンはおかずをチスンのお皿に入れてあげた。

「…ありがとう」


無理だ…
ジスンとクミとずっと一緒にいたい…
2人を残して逝けない…
子供も生まれてくるのに…

まだ死にたくない…



翌日チスンは部屋にこもり、病気のことを調べた。


先生の言う通りだ…
治療しても記憶がなくなる確率99%…
死亡率1年未満で99%…
抗がん剤で長くて1年…
いずれも病体が4個以上の場合…
手術不可能… 


チスンはアメリカにいる知り合いの医者に電話をし、出掛ける準備をして部屋を出た。


「出掛けるの?」

「うん…ちょっと事務所に行って来る」


チスンは事務所に行くと、誰もいない部屋にマネージャーを呼んだ。


「チスンさん、何か話しでも?」

「うん…今から話すこと、絶対誰にも言わないで」

「はい…」

「俺…あまり長くないみたいなんだ…」

「え?長くないとは?」

「…ガンで余命宣告された…」

「…え?うっ、嘘でしょ?」
 
「本当だよ」

「よ、余命宣告って…え⁈手術は…で、出来ないんですか⁈」


マネージャーはショックで声が震える。


「手術は難しいみたい…」

「そ、そんな…どこにガンがあるんですか⁈」

「脳だよ」

「…え」


マネージャーは更にショックを受ける。


「…生きたいんだ」

「チスンさん…」

「俺1人ならいいけど…クミとジスン、それにこれから生まれてくる子供もいるのに。やっと幸せになれたのに、死にたくない…」

「…死なせません!!」


するとマネージャーはどこかに電話をかけた。
しばらく話し、電話を切った。


「顔が広い知り合いの医者に電話しました。手術してくれる病院を見つけてくれるはずです。診断書など必要なので準備しましょう」

「ありがとう。俺も探してもらってる」

「じゃあ、今から診断書もらいに病院に行きましょう」

「マネージャー…」


マネージャーは必死だった。


病院に着き、必要書類をもらった。


「これらはコピーして渡しておきますので、チスンさんは帰って休んで下さい」

「うん…ありがとう」

「あっ…薬はちゃんと飲んで下さいね」

「ハハハ、わかってるよ」

「チスンさん、必ず見つかるはずです‼︎」

「うん…」


チスンはマネージャーの存在が心強かった。




3日後、チスンの知り合いのアメリカの医者から連絡があり、メールで送っていた診断書を見て手術は厳しいと言われた。
優秀な医者だっただけに、チスンはショックを隠せなかった。


マネージャーが当たっているところも、全て難しいとのことだった。


マネージャーはチスンのことが心配になり、15時過ぎにチスンのマンションに行った。


「マネージャーさん‼︎」

「どうも、お久しぶりです。あの…チスンさんは?」

「ちょっと待ってて下さい。呼んで来ます」


しばらくして久美子が戻って来た。


「今、自分の部屋にいるんですけど…マネージャーを通すように言われました。どうぞ」

「は、はい」


マネージャーはチスンの部屋に入った。


「チスンさん…」

「俺のことが心配になったんでしょ?」

「、、、、」

「もう無理なのかな、俺の病気は…」

「そっ、そんなこと!」

「マネージャー、俺どうしたらいいと思う?」

「え…」

「自分でもどうしたらいいのか分からない…」


マネージャーは何て言ったらいいか分からなかった。


「結婚しない方がいいのかな。先が長くない人と結婚しても、余計に悲しませることになってしまう…」

「チスンさん、まだ諦めちゃダメです。他にも当たってみましょう」

「どっちにしろ結婚は延期にするしかない…」

「…そうですね」

「マネージャー、これから一緒に病院に行って欲しいんだけど」

「病院に?」

「今後のことで家族を連れて来て下さいと言われてるんだけど、とても言えないから」

「わかりました。行きましょう」


2人が部屋を出るとジスンが寄って来た。


「パパ、どこか行くの?」

「うん、ちょっと出て来る」

「帰りは遅くなるの?」

「19時までには帰れると思うよ」

「じゃあ、ご飯作って待ってるね!」

「パパ、早く帰って来てね」

「うん!」




病院に着いた2人は、担当医の部屋に入った。


「チスンさん、こちらの方は?」

「僕のマネージャーです」

「ご家族の方は?」

「家族にはちょっと…マネージャーでもいいでしょ?」

「え…でも…」

「チスンさんは私にとって家族同然です」


マネージャー…


「…わかりました。では今後のことなんですが、抗がん剤治療ということでどうでしょうか?」

「抗がん剤治療しても治らないんですよね?」

「…そうですが、何もしなければいつどうなるか」

「治療をして、約1年生きれるってことですね…」

「はい」

「治療中は症状が出て、周りに知られますよね?」

「ご存知だと思いますが…脱毛、吐き気、力の衰えが出て来ますので、せめてご家族には話された方が…」

「もし治療しなかったら、症状は出ないんですか?」

「そのうち出てきます。強い頭痛におかされ倒れてしまう可能性があります」

「いつ頃から出てきますか?」

「1ヶ月前後くらいからだと思います」

「そんなに早く?」

「抗がん剤治療はしません」

「え?」

「どうせ治らないのなら、何もしません。副作用で弱っていくとこ見せたくないし」

「でも、何もしなかったら何が起きるか…」

「大丈夫です。ありがとうございました。失礼します」


2人は病院を後にした。


「チスンさん、本当にそれでいいんですか?」

「うん。副作用出てきたら仕事出来ないでしょ」

「仕事は休まれた方が…」

「するよ。ドラマも引き受けたし、責任持ってやる」

「チスンさん…」


本当は、久美子とジスンに弱っていく姿を見せたくなかったのだ。



チスンは家に帰って夕食を終えると、ジスンが寝たのを見計らって久美子をソファーに座らせた。


「チスン…どうしたの?」

「…あのさ、結婚のことだけど…」

「うん」

「来週入ってすぐは仕事が立て込んでて、来月半ばからドラマの撮影も入るから…それが落ち着いてからにしたいんだけど」


嘘をつきたくなかったけど、こう言うしかなかった。


「え…」

「ごめん…」

「仕事が忙しいなら仕方ないよね…結婚は延期するだけだよね?」

「…うん」

「うちの実家は…どうする?」

「ごめん。日を改めよう…」

「わかった…明日にでも電話入れとく。チスンのご両親には話したの?」

「まだ…話しておくよ」


久美子は少し不安だった。


「チスン…落ち着いたら絶対結婚するよね?」


チスンは久美子を抱きしめた。


「…うん。するよ…」







しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

年下男子に追いかけられて極甘求婚されています

あさの紅茶
恋愛
◆結婚破棄され憂さ晴らしのために京都一人旅へ出かけた大野なぎさ(25) 「どいつもこいつもイチャイチャしやがって!ムカつくわー!お前ら全員幸せになりやがれ!」 ◆年下幼なじみで今は京都の大学にいる富田潤(20) 「京都案内しようか?今どこ?」 再会した幼なじみである潤は実は子どもの頃からなぎさのことが好きで、このチャンスを逃すまいと猛アプローチをかける。 「俺はもう子供じゃない。俺についてきて、なぎ」 「そんなこと言って、後悔しても知らないよ?」

エモパレ ―感情が見えるぽっちゃりな私が、オジさま副局長を無自覚なまま搦め捕るまで―

久乃亜
恋愛
前世の記憶を持つぽっちゃり看板娘ハルネは、 人の「感情の色」が視える魔眼『エモパレ』と、持ち前の経営手腕で、実家の香房を切り盛りしていた。 そんなある日、とある事件から、 オジさま――第二調査局副局長、通称「鬼のヴァルグレイ」に命を救われ、 ハルネの理想のオジさま像に、一瞬で恋に落ちる。 けれど、彼がハルネに告げたのは、愛の言葉ではなく ――理不尽な『営業停止』の通告だった!? 納得いかないハルネは、自らの足と異能で犯人を追い詰めることを決意する。 冷徹で無表情な彼だが、なぜかハルネに同行し、過保護なまでに手伝ってくれて……? 「人生2週目」のポジティブぽっちゃり娘と、不器用な冷徹最強騎士が織りなす、 お仕事×捜査×じれじれの初恋溺愛ファンタジー! ※ 第1部(1~3章)完結済み。 毎日投稿中

課長のケーキは甘い包囲網

花里 美佐
恋愛
田崎すみれ 二十二歳 料亭の娘だが、自分は料理が全くできない負い目がある。            えくぼの見える笑顔が可愛い、ケーキが大好きな女子。 × 沢島 誠司 三十三歳 洋菓子メーカー人事総務課長。笑わない鬼課長だった。             実は四年前まで商品開発担当パティシエだった。 大好きな洋菓子メーカーに就職したすみれ。 面接官だった彼が上司となった。 しかも、彼は面接に来る前からすみれを知っていた。 彼女のいつも買うケーキは、彼にとって重要な意味を持っていたからだ。 心に傷を持つヒーローとコンプレックス持ちのヒロインの恋(。・ω・。)ノ♡

一億円の花嫁

藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。 父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。 もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。 「きっと、素晴らしい旅になる」 ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが…… 幸か不幸か!? 思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。 ※エブリスタさまにも掲載

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

恋は襟を正してから-鬼上司の不器用な愛-

プリオネ
恋愛
 せっかくホワイト企業に転職したのに、配属先は「漆黒」と噂される第一営業所だった芦尾梨子。待ち受けていたのは、大勢の前で怒鳴りつけてくるような鬼上司、獄谷衿。だが梨子には、前職で培ったパワハラ耐性と、ある"処世術"があった。2つの武器を手に、梨子は彼の厳しい指導にもたくましく食らいついていった。  ある日、梨子は獄谷に叱責された直後に彼自身のミスに気付く。助け舟を出すも、まさかのダブルミスで恥の上塗りをさせてしまう。責任を感じる梨子だったが、獄谷は意外な反応を見せた。そしてそれを境に、彼の態度が柔らかくなり始める。その不器用すぎるアプローチに、梨子も次第に惹かれていくのであった──。  恋心を隠してるけど全部滲み出ちゃってる系鬼上司と、全部気付いてるけど部下として接する新入社員が織りなす、じれじれオフィスラブ。

溺愛ダーリンと逆シークレットベビー

吉野葉月
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。 立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。 優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?

処理中です...