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55話 前兆
しおりを挟むそれから1か月後、チスンはドラマの撮影に入り普通に生活していた。
手術が出来る病院は未だ見つからず、半分諦めかけていたチスンは仕事に没頭していた。
この日の撮影中、チスンは激しい頭痛に襲われた。
心配でずっと見ていたマネージャーがチスンの異変に気付き、監督の元へ向かった。
「監督すみません。ちょっと休憩入れさせてもらってもいいですか?今日の朝からチスンさんの体調が良くなくて」
「だからか。今日はいつものチスンらしくないと思ってた。体調悪いなら今日はもう帰っていいですよ」
「ありがとうございます」
一旦、休憩に入りマネージャーはチスンの元へ行った。
「チスンさん、これから病院に行きましょう」
「え?どうして?まだ終わってないけど」
「頭、痛いんでしょ?」
「あ…さっきちょっと痛かっただけだよ」
監督もやって来た。
「チスン、もう今日は帰って休め。表情硬いし今日はお前らしくないぞ。最近、頑張り過ぎなんだよ」
「…すみません」
マネージャーはチスンを車に乗せ、病院へ向かった。
「顔色がよくないですね。ちゃんと薬は飲んでますか?」
「飲んでます」
「治療始める気になりましたか?」
「すみません。それはちょっと」
「それじゃ、今日は?」
「今日、急に頭に激痛がきたんです」
「熱は?」
「ないと思います」
「とりあえず測って下さい」
先生はチスンに体温計を渡す。
「食欲はありますか?」
「はい」
ピピピピ…体温計の音が鳴った。
37.5度だった。
「微熱がありますね。チスンさん…症状が出始めたかも知れません」
「…え」
「先生、どうすれば?」
「抗がん剤治療しか…」
「先生!頭痛薬頂いてもいいですか?」
「…はい。ただ今後はもっとひどい頭痛に襲われると思いますので、薬じゃ効かないかも知れません。どうしても治療はしませんか?」
「はい」
「…わかりました。今日は薬出しておきますので、また何かありましたら直ぐに来て下さい」
2人は病院を出た。
「チスンさん…大丈夫ですか?」
「大丈夫って言ったら嘘になるかな」
「手術出来るところ、まだ自分は諦めてませんので。きっと凄腕の医者がいるはずです。もっと範囲を広げて探しますので」
「マネージャー、ありがとう…」
チスンは家に帰った。
部屋からはキムチチゲの匂いがしている。
「ただいま」
リビングには誰もいない。
「クミ?ジスン?」
周りを探しても見当たらない。
すると、ダイニングテーブルの下から久美子とジスンが飛び出してチスンを驚かせた。
「わぁーっっ!!!」
「うわっ、びっくりしたー!」
「やったー!パパがびっくりしてるー」
「もう。何やってんだよー」
「ジスンが驚かせたいって言うから。それに…」
「それに?」
「今日はパパとママが付き合った記念日なんでしょ?」
「え?」
「今日は私たちが付き合い始めた日だよ。チスンは知らなかったでしょ~」
「ご、ごめん。そうだったんだね」
「いいのよ。あれから何年も経ったしね」
久美子がチスンに箱を渡した。
「何これ?」
「開けてみて」
箱を開けると中は時計が入っていた。
「私、チスンにもらってばかりで何も贈ってなかったから」
「そんな、いいのに…」
「そんなに高い物じゃないし、考えたらチスン、時計たくさん持ってたね…」
「ううん。嬉しいよ‼︎ありがとう!毎日この時計着ける!」
「パパ、これジスンから!」
ジスンは1枚の画用紙をチスンに渡した。
「これは?」
「チスンと私とジスンだって」
それは3人で手を繋いでいる絵だった。
「ジスン、ありがとう!」
「ジスン、よかったね」
「うん!!」
「俺から何もなくてごめん…」
「そんなこと気にしないで。私とジスンからの日頃の感謝の気持ちだから。さ、ご飯食べよ。今日はチスンの好きなキムチチゲだよ!」
チスンは嬉しさの反面、複雑な心境だった。
「チスン、キムチチゲだからビール飲みたいでしょ?」
久美子はビールを開けチスンに渡す。
「あっ…ありがとう」
「パパ、赤ちゃん生まれたら次は4人の絵を描いてあげるね」
「…うん」
「チスン、1度日本に行かない?お母さんが心配してて。結婚の報告じゃなくても1度会って欲しいし、ジスンも会わせたいの。チスンの時間取れる時でいいから」
「…うん」
「パパ、何でお酒飲まないの?」
チスンは突然、ビールを持って立ち上がった。
「お風呂溜めてないよね?ちょっと溜めてくる」
「ビール持って?」
「う、うん」
チスンは洗面台にビールを流した。
お風呂を溜めようとすると、立っていられないくらいの頭痛に襲われ、その場にしゃがみ込んだ。
「パパ遅いね」
「そうだね。ちょっと見て来るね」
久美子が浴室を覗くと、チスンが頭を抱えてしゃがみ込んでいた。
「チスン!!チスン!!」
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