真実【完結】

真凛 桃

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61話 絶望感

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朝方になり泣き疲れたジスンは眠り、久美子は左手の薬指にはめている指輪を眺めていた。


何があったのよ…

チスンが私たちを置いていくなんて…
あり得ない…



久美子はどうしても受け入れることが出来ず苦しんでいた。


すると玄関のチャイムが鳴った。


チスン…⁈


慌てて久美子がドアを開けると、そこに立っていたのはホンユだった。


「ホンユさん…」


ホンユは黙って中へ入って行った。


「どうして…ホンユさんが?」

「ジスンは?」


ホンユが寝室を覗くと、眠っているジスンを見て安心した。


久美さんもジスンも、目がこんなに腫れちゃって…


「久美さん…大丈夫?…じゃないよね」

「どうして…どうしてこんなふうに…」

「実は…チスンから久美さんと別れるって聞いてて心配で来たんだ」

「チスンに何かあったんですか⁈」

「…いや…」

「じゃないと、別れたいなんて…信じられない‼︎」

「久美さん…信じられないだろうけど、実は…チスンは少し前から、久美さんとジスンを負担に感じてたみたい…」

「嘘よ‼︎そんなのあり得ない!!」

「久美さん…」

「ホンユさん、何か知ってるんでしょ⁈チスンに何があったんですか⁈」


久美子はホンユにしがみつき泣き出した。


ホンユは言葉が出なかった。


「私…チスンがいないと生きていけない…」

「久美さん、そんなこと言ったらジスンが可哀想だよ!お腹の子だって…」

「チスンの子ですよ。あんなに2人目出来て喜んでたのに。ジスンのこともすごく大切にしてたのに…あり得ない‼︎簡単に私たちを捨てるなんて…」

「簡単に、なんかじゃない!!」

「え…?」

「やっぱり…知っておくべきだよ!」


ホンユは心の中でチスンに謝った。


「俺、チスンに久美さんとジスンを頼むって言われてたけど、俺と一緒になる気なんて全くないでしょ?久美さんにはちしかダメだって分かってる。これじゃあ時間かけても無理だ」

「ど、どういうことですか?」

「久美さん、落ち着いて聞いて。チスンは…」

「チスンが…何ですか?」

「チスンは病気なんだ」

「病、気…?」

「だから本当は、久美さんとジスンのことが負担じゃなくて、自分が負担になるし幸せに出来ないから別れたんだよ」

「そんな…負担だなんて…それに治せばいいじゃないですか‼︎」

「…治らないし、長くないみたいなんだ」

「…え」

「長くて…1年らしい」

「長くて1年?え?」

「ガンなんだ」


そ、そんな…


「だから、あいつの気持ちも分かってやって」


久美子は耳を疑った。


「本当は口止めされてたけど、知ってた方がいい」

「チ、チスン…携帯繋がらないんです。連絡とってもらってもいいですか?」

「ごめん。俺も繋がらない…」

「どこの…チスンはどこの病院に行ってるんですか⁈」

「多分、◯◯病院だと思うけど」

「すみません、ジスン見てて下さい」


そう言うと久美子は急いで病院に行った。

チスンの病気のことを詳しく聞きたかったのだ。


1時間後、久美子は病院に着くとチスンの担当の先生を探し、先生の部屋に入って行った。



その頃、ホンユの携帯にチスンから電話が入った。


「もしもし、チスン!」

「ごめん、ずっと電源切ってたから…クミとジスンはどう?」

「チスン…ごめん」

「え?」

「お前の病気のこと…久美さんに言ってしまった」

「え⁈どうして⁈どうして言ったんだ‼︎」

「俺、やっぱり無理だ…久美さんにはチスンしか頭にない。時間かけても無理だ…」

「だからって病気のこと言うなんて…」

「久美さん、病院に行ったよ。◯◯病院だよな?多分、チスンの担当の先生に確かめに行ったと思う…」

「え⁈」


電話を切り、チスンは急いで病院へ向かった。


病院に着いたチスンは、先生の部屋がある9階に行った。
ちょうど先生の部屋から、久美子が出てきた。


チスンは久美子の後を付けていくと、久美子は非常階段へ行った。
そっとドアを開けて覗くと、久美子は階段に座り込み声を上げて泣いていた。


チスンは静かに上の階の階段に座った。

泣きわめく久美子を見ても、チスンはどうすることも出来なかった。



1時間後、久美子は立ち上がり病院を後にする。

チスンは心配で久美子の後をついて行った。


ここから歩いて帰るのかよ…
30分以上かかるのに…


チスンは、まだ安定期じゃない久美子の体のことが心配でたまらなかった。


久美子が方角的にマンションに向かっていることが分かったチスンは、携帯の電源を入れるとホンユに電話をかけた。


「もしもし、ホンユ」

「ちょっと待って」


ホンユはジスンに聞かれないように、別の部屋に行った。


「もしもし、チスンどうした?」

「クミがもうすぐ帰り着くはずだから」

「え?病院で会ったのか?今一緒なの⁈」

「クミは俺には気付いてないよ。ホンユ…クミが落ち着くまで、着いてやってて欲しい」

「…でも」

「無理なお願いしてるのは分かってる。だけど心配なんだ…」

「…わかったよ」

「それから…ジスンは?どうしてる?」

「朝から何も飲まず食わずだよ。しゃべってもくれない」

「え…」

「俺が何言っても食べないし、ずっと玄関にいる。久美さんも多分、食事もしないと思う。妊娠中なのに…俺どうすればいい?」

「ホンユ…」

「ん?」

「明日、アメリカに行くよ」

「え?明日⁈アメリカに⁈」

「明日、空港にジスンだけ連れて来てもらえないかな?」

「ジスンを?」

「ちょっとジスンに話したいことがあって」

「わかったよ。久美さんにバレないように何とかしてジスンだけ連れて行くよ」

「ありがとう…ホンユ」




その後、久美子がマンションに入って行くのを見届けたチスンは、ホテルに戻って行った。









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