真実【完結】

真凛 桃

文字の大きさ
上 下
68 / 76

68話 さよならチスン

しおりを挟む

それから2日後、いつも通りホンユが様子を見に来て、お昼前に帰って行った。

その後、久美子は1通の手紙を持ってジスンとバスに乗り、海に行った。



「うわーっ!海だー!」

「ジスンは海に来るの、2回目だね」

「うん。前にパパと行ったよね。楽しかったな~」

「そうだね…」


ジスンは砂浜を走り回った。

久美子は岸辺に座り、海を眺めていた。



チスン…
私とジスンを見てくれている?
今日はね…お別れに来たよ。
ジスンと、もうすぐ生まれてくる子と3人で前向いて行くよ。


チスン…
今まで本当にありがとう。
いつか私もそっちへ行くから、待っててね。

それまで、さようなら



久美子はチスンへの感謝の気持ちを綴った手紙を海に流した。



もう私、泣かないからね…


   (えっっ…⁇)



久美子は後ろを振り向いた。
チスンがいるような感じがしたのだ。


いるはずない…

チスン、近くで見守ってくれてるんだね…






海を後にした帰り、ジスンを連れて久しぶりに店長に会いに美容室に行った。


「クミちゃんっ‼︎ジスンも‼︎」

「店長!お久しぶりです‼︎」

「お姉ちゃーん‼︎」

「本当に久しぶりー。お腹も大きくなってー!」

「もう、いつ生まれてもいい位です」

「そうなのー?えっ?今日は?」

「ジスンと海に行って来たんですが、久しぶりに店長に会いたくなって、寄りました!」

「そうだったんだ!嬉しい!まぁ座って!」

「はいっ」

「ジスンも一段と可愛くなっちゃって~」

「ヘヘヘッ」

「幸せそうだね!」

「まっ、まぁ…」

「チスンさんは?今日、仕事?」

「そ、それは…」

「パパはお仕事で遠いとこに行ってるよ」

「そ、そうなの?もうすぐ子供生まれるのに?近いうちに帰って来るんでしょ?」

「パパ、忙しくてまだ帰って来ないみたい」

「えーっ⁈チスンさんは家庭を優先する人だと思ってた」

「ジスン、ちょっとあっちで本読んでおいで」

「はぁーい」

「クミちゃん?」

「店長…実は、チスンはもういないんです」

「え?いないって…どういうこと?」

「チスンはガンで余命宣告されてて、私とジスンから去って行きました。悲しませたくなかったんだと思います」

「う、嘘でしょ…余命宣告って…」

「長くて1年って言われてて、もうすぐ1年経つから…」

「し…信じられない。連絡もないの⁈」

「…はい。だから今日、海に行ってチスンとお別れして来ました」

「で、でもテレビでニュースにもならないし…あのチスンだよっ。何があったらニュースになるでしょ⁈」

「チスンは誰にも知られないように、遠くへ行ったんだと思います」

「そ、そんな…」

「私はもう大丈夫です。ジスンと生まれてくる子と3人で幸せになります」

「1人で大丈夫?」
 
「大丈夫です」

「生活…苦しくならない?」

「チスンが残してくれてたから、多分一生暮らせますよ」

「そっか…でも、そんなことになってたなんて…クミちゃん、辛かったね…」

「もう断ち切りましたから!それに店長の顔見てもっと元気になりました」

「クミちゃん…」

「じゃ、そろそろ帰りますね」

「クミちゃん、いつでも連絡してね。いつでも力になるし、協力するから」

「店長…ありがとうございます!」




久美子とジスンは店長と別れ、マンションに帰った。









しおりを挟む

処理中です...