67 / 76
67話 整理
しおりを挟む翌朝、久美子が目を覚ますと隣にジスンがいなかった。
リビングに行くと、ホンユとジスンが料理をしていた。
「ジスン…」
「ママー、おはよう!ジスンねー、お料理のお手伝いしてるんだよー」
「久美さん、おはよ。ジスン、俺より上手だよ」
初めてジスンが椅子の上に立って料理をしている姿を見て、久美子は心を打たれた。
朝食が出来上がり、3人で食事をする。
「ママの目玉焼きはジスンが作ったんだよ」
「ジスン、ありがとう」
「お兄ちゃん、卵1個床に落としたもんねー」
「シッ!ジスン、それ言うなって」
久しぶりに和やかな雰囲気になり、食べ終わったジスンはテレビを見に行った。
「久美さん、あれからゆっくり寝れた?」
「はい!もうこれからは大丈夫です」
「よかった」
「今日、チスンの部屋を片付けようと思います」
「えっ…」
「この家も落ち着いたら出て、どこか他に住む所を探します」
「そこまでしなくても…」
「実は、チスンが出て行く前に通帳もらったんです。チスンは私に管理して欲しいからって言ってたけど…こういうことだったんだと思うから」
「…そっか。じゃ、使わないとね」
ホンユが帰ってしばらくすると、久美子はチスンの部屋を片付け始めた。
たくさんのスーツやカッターシャツ、ネクタイなどをダンボールに詰めた。
これでいいんだ…
前に進む為に強くならなきゃ…
ジスンとこの子の為…
そしてチスンの為に…
するとお腹の赤ちゃんが動いた。
久美子は嬉しくなり、お腹に手を当てた。
もうちょっと待ってね。
お母さん、頑張るから…
あと少しの辛抱よ…
もっと栄養つけなきゃね!
久美子はお腹の子に優しく話しかけた。
そして、寝室のシーツも替え、なかなか捨てきれなかったチスンの歯ブラシも処分した。
この日、久美子は夕方まで家の中を掃除していた。
3日後。
朝、いつも通りホンユが来て、久美子とお茶を飲んでいた。
「そういえば…この前、落ち着いたらここを出るって久美さん言ってだけど、落ち着いたらっていつ頃?」
「そうですね、この子が生まれてからでも…」
「そんなに早く?もうちょっと後でもいいんじゃない?」
「なぜですか?」
「いや…何となく」
「もう決めたので」
「もしかして次に住む家、もう探してるの?」
「はい。ネットでいくつかいい所は見つけました。」
「マジで⁈俺に任せてよ。ネットじゃ当てにならないから」
「そ、そうなんですか?」
「うん。だから、久美さんは探さなくていいから…ねっ」
「…わかりました」
「チスンの…」
「え…?」
「チスンの部屋は片付けたの?」
「…はい」
「ちょっと見て来ていい?」
「どうぞ」
ホンユはチスンの部屋に入った。
しばらくしてホンユが戻って来た。
「あいつ、いい物ばっかり持ってるな~ダンボールに詰めてるけど、どうするの?捨てるの?」
「はい…ここを出る時に処分しようと思います」
「そうだね。捨てちゃえ捨てちゃえー!こっちの気持ちも分からずに出て行った奴のなんて、全部捨てちゃえ!」
「…ホンユさん?」
「時計はいくつか俺が頂こうかな~」
「ホンユさん、何かいい事でもあったんですか?異様に明るいような…」
「そ、そぉ?いつもと変わらないけど…」
「そうですかぁ?」
「そっ、そういえば…お腹の子は女の子かな、男の子かな?」
「どっちでしょうね」
「もう性別は分かるんでしょ?聞かないの?」
「はい。元気に生まれてきてくれたら、男の子でも女の子でもどちらでもいいので…」
「そっか。チスンと久美さんの子だから、きっと可愛い子が生まれてくるんだろうな~」
「…は、はい」
「ジスンの時、チスンは立ち会いたかっただろうな~俺だったら怖くて立ち会うのは無理だけど…」
「ホンユさん、もうチスンの話は…」
「あっ、ごめんごめん。そういえばジスンはまだ寝てるのかな~ちょっと見てくるね~」
何…?今日のホンユさん…何だか変…
6
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
Sランクの年下旦那様は如何でしょうか?
キミノ
恋愛
職場と自宅を往復するだけの枯れた生活を送っていた白石亜子(27)は、
帰宅途中に見知らぬイケメンの大谷匠に求婚される。
二日酔いで目覚めた亜子は、記憶の無いまま彼の妻になっていた。
彼は日本でもトップの大企業の御曹司で・・・。
無邪気に笑ったと思えば、大人の色気で翻弄してくる匠。戸惑いながらもお互いを知り、仲を深める日々を過ごしていた。
このまま、私は彼と生きていくんだ。
そう思っていた。
彼の心に住み付いて離れない存在を知るまでは。
「どうしようもなく好きだった人がいたんだ」
報われない想いを隠し切れない背中を見て、私はどうしたらいいの?
代わりでもいい。
それでも一緒にいられるなら。
そう思っていたけれど、そう思っていたかったけれど。
Sランクの年下旦那様に本気で愛されたいの。
―――――――――――――――
ページを捲ってみてください。
貴女の心にズンとくる重い愛を届けます。
【Sランクの男は如何でしょうか?】シリーズの匠編です。
ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~
cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。
同棲はかれこれもう7年目。
お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。
合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。
焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。
何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。
美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。
私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな?
そしてわたしの30歳の誕生日。
「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」
「なに言ってるの?」
優しかったはずの隼人が豹変。
「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」
彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。
「絶対に逃がさないよ?」
あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。
まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。
あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……
夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
俺に抱かれる覚悟をしろ〜俺様御曹司の溺愛
ラヴ KAZU
恋愛
みゆは付き合う度に騙されて男性不信になり
もう絶対に男性の言葉は信じないと決心した。
そんなある日会社の休憩室で一人の男性と出会う
これが桂木廉也との出会いである。
廉也はみゆに信じられない程の愛情を注ぐ。
みゆは一瞬にして廉也と恋に落ちたが同じ過ちを犯してはいけないと廉也と距離を取ろうとする。
以前愛した御曹司龍司との別れ、それは会社役員に結婚を反対された為だった。
二人の恋の行方は……
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる