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第1章
16話 夫の焦り
しおりを挟むスミがバイトを始めて2週間が経ち、この日バイトが終わると店の前にシュンが車を停めて待っていた。
「スミさん、お疲れ」
「シュンさん、今帰りですか?」
「はい。送ります」
「ありがとうございます」
車を走らせた。
「いつもコーヒー買いに来てくれてありがとうございます」
「いいえー。コーヒーはよく飲むし、スミさんが出してくれるコーヒー美味しいから」
「本当ですかぁ」
「仕事、楽しいですか?」
「すごく楽しいです」
「それは良かった」
「主人とも顔合わせない様にしてるし、会話もないです」
「居心地悪いでしょ…」
「はい…だから仕事場が唯一落ち着ける場所です」
「そうですか…スミさん?」
「え?」
「ちゃんと食事してます?何か痩せた様な…」
「そ、そうですか?ちゃんと食べてますよ~」
「本当ですか?」
「は、はい」
「もしよかったら、また今度あの店に食事しに行きませんか?」
「はいっ、是非!」
「それと…今月決算で今は月末だから2~3日忙しくて、コーヒー買いに行けそうにありません」
「そうなんですね。全然気にしないで下さい。頑張って下さいね」
「スミさんも頑張って」
「はい!!」
家に着き、スミが家に入ると珍しく裕二が先に帰っていた。
スミは黙ったままシャワーを浴びに浴室に行った。
シャワーを浴び、リビングに行くと裕二がソファーでくつろいでいたので、そのままスミは寝室に行こうとした。
「スミッ‼︎ちょっと話そう」
「話すことない…」
「こっちがあるんだ。座って」
スミは嫌々ソファーに座った。
「スミ、何でそんな態度とるんだよ。別荘から帰って来た日からおかしいぞ!」
「、、、、」
「何だよ‼︎俺が何かしたか⁈」
「本当、何もわかってないんだね」
「なっ、何が⁈」
「私…見たんだけど」
「え…?何を?」
「秘書の人と…キスしてたでしょ」
「…え」
言うつもりはなかったが、スミはつい言ってしまった。
「えっ、おっ、俺が?秘書と?なっ、何言ってんだよ」
「夜、こっそり抜け出して外で抱き合ってキスしてるの見たんだけど」
「…あっ、あれ⁈あーっ、あれはその…別の書類を渡すの忘れてたみたいで呼ばれて取りに行ったんだ。そしたら秘書の顔に何か付いてて取ってやってたんだよ。スミにはキスしてる様に見えてたんだな。そんな事する訳ないだろっ」
やっぱりシラを切った…
スミは呆れて寝室に行こうとすると裕二が腕を掴み引き止めた。
「離してよっ」
「そんな事で怒ってたのか⁈俺を信じろよ。勝手に疑うなよ。スミを裏切るはずないだろ!」
「そんな事…?」
「とにかくスミの勘違いだから‼︎」
「…そうですね」
スミは呆れも怒りも通り越した。
「それより、バイトしてるだろ?どんなバイトしてるんだよ。場所は?」
「何だっていいでしょ」
「何だよそれ。もうさぁ、俺の金自由に使っていいからバイト辞めろよ」
「嫌よ、辞めない」
「じゃ、どこでどんなバイトしてるかぐらい教えてくれたっていいだろ‼︎」
「嫌っ」
「まだ怒ってんの?誤解だってのに。教えてくれないならいいよ。どうせすぐ辞めるだろうし」
「勝手にそう思ってれば?」
「本当スミは…」
「何?」
「いや…何でもない」
「じゃ、私寝るから」
スミは寝室に行った。
クソッ‼︎まさか見られてたなんて…
俺としたことが…
まだスミは俺のこと疑ってるようだし…
しばらくアキとは会わない方がいいな…
裕二はウイスキーを一気に飲み干すと、自分の部屋に行かずスミが寝ているベッドに入った。
え…⁈
スミが目を開けると、裕二がスミの上に乗っていた。
「な、何⁈どいてよ!」
「いいだろ、久しぶりに…」
裕二はスミにキスをし服を脱がそうとした。
「やめてっ!!いやーっ!」
スミは裕二を押し退け急いで洗面台に行き、泣きながら何度も口を洗った。
「ス…スミ…何してんの?」
追って来た裕二は、スミが何度も口を洗っている姿を見てショックを受けていた。
「あっち行って!!」
「そ、そうだよな…スミはまだ俺のこと疑ってるのに、嫌だったよな。ごめん…」
そう言うと裕二は自分の部屋に戻った。
スミはベッドに入るが眠れなかった。
他の女を抱いている裕二を受け入れる事が出来なかった。
あんな無理な言い訳するなんて本当に情けない…呆れるわ…
証拠…早く証拠を見つけなきゃ…
いったいどうやって見つければ…あ‼︎ライン…
裕二の携帯の秘書とのラインのやり取りを写真に残せばいいんだ…
スミは早速、裕二の部屋を覗き寝ているのを確認すると、そっと中へ入った。
裕二の携帯を取り、裕二の指を携帯に当てて画面を開いた。
え…
ATとの会話がない…
消してる…
そんな…
会話のやり取りは全部削除されていた。
スミはそっと携帯を元の位置に戻し、寝室に戻った。
もしかしてと思い、裕二は秘書とのラインのやり取りを削除していたのだ。
スミの奴…
裕二は寝たふりをしていた。
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