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第2章
69話 新たな事実
しおりを挟む翌朝、専務が迎えに来た。
「専務、朝からありがとう。会社は大丈夫?」
「大丈夫です。今日は午後から出勤にしましたので」
「そっか」
「そちらの方が…初めまして黒川と申します」
「初めまして。柳本スミと言います」
「どうぞ車乗って下さい」
シュンとスミが後部座席に座ると専務は車を走らせた。
「メールで届いた住所に行けばいいんですよね?」
「うん。その前に銀行に寄ってもらいたいんだけど」
「…わかりました」
「銀行に用事があるの?」
「…うん、ちょっとね」
都内に入り銀行の前で車を停めた。
「社長が銀行に行くの初めて見ましたよ」
「何しに行ったんでしょうね」
「今までカードばかりだったから…現金を下ろしに行ったんでしょう」
「え?今カード持ってないんですか?」
「えっ?」
もしかしてカード取られたこと知らないのか…
専務は話を逸らした。
「私、今柳本グループで働いてるんですよ」
「えっ⁈ど、どうしてですか⁈」
「ちょっと色々あって。柳本社長、ご主人ですよね?」
「…はい」
「ご主人のせいで地曽田グループが潰れかけたのはご存知でしたか?」
「え…ど…どういう事ですか⁈主人が地曽田グループを?」
「やっぱり地曽田社長は話してないんですね。そうだとは思いましたけど…この事は知っておいた方がいいと思って。柳本社長は酷すぎます。それで地曽田社長はどれだけ大変だったか…」
「知りませんでした…あの人は…あの人は一体何をしたんですか⁈」
「それは…今社長が出て来ましたので言えませんけど、とにかく早く別れた方がいいと思います」
「…はい」
スミは裕二を許せず怒りだけが込み上げてきた。
「お待たせ」
「じゃ行きますね。もうここからでしたら30分もかかりませんね」
「うん」
シュンはスミの異変に気づいた。
「スミ?何か怒ってる?」
「えっ…」
「さっきから怖い顔してるけど」
「もしかしたらお腹空いてるんじゃないですか?何も食べてないでしょ?」
「…スミ、そうなの?」
「…うっ、うん」
「じゃ着いたら荷物置いて食事に行こうか」
「うん…」
専務はしばらく車を走らせマンションの前で停めた。
「ここですね」
「ありがとう」
「社長っ、ちょっと話があるんですが」
「何?」
「ちょっと」
専務はチラッとスミを見た。
「あっ…私先に行ってるね」
「じゃ鍵渡しとくね。17階の1703号室だから」
「わかった」
スミは鍵を受け取るとマンションの中に入って行った。
「何話って?」
「岸田から聞きました。会社辞めたんでしょ?驚きましたよ!何もそこまでしなくても」
「こうするしかなかったんだ」
「カードも車も会長に返されたんですよね。どうするんですか?これから…」
「いつかは自分で会社を立ち上げようと思ってる。それまで何か仕事探さなくちゃな」
「地曽田グループの社長だったんですよ。雇ってくれるとこあるでしょうか?」
「職種はこだわらないから面接行きまくるよ」
「…もし私に何か出来る事があればいつでも言って下さい」
「ありがとう。でも大丈夫だから」
「そう言うと思いました。私は今まで社長にお世話になりっぱなしでしたし、社長の力になりたいんです。だから今回も迎え頼まれたのがすごく嬉しかったです。ちょっとした事でもいいので頼って下さい」
「…黒川専務…わかった」
「絶対ですよっ。それと…スミさん、いい人そうで安心しました。必ず2人で幸せになって下さいね」
「うん」
「ところで聞いていいですか?」
「何?」
「このマンションって普通に高級マンションですよね?」
「え…そうかな」
「家賃までは聞きませんが大丈夫なんですか?カードもないみたいだし」
「大丈夫だよ!あ~まさかお金の面で心配されるなんて思ってもみなかったよ」
「そうですね。じゃそろそろ会社に行きますね」
「うん。ありがとう。助かったよ」
シュンが車を降りると専務は会社へ行った。
シュンとスミは食事して必要な物を買って帰り、家具や電化製品が次々と部屋に運ばれた。
この日から2人の新居での生活が始まった。
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