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第2章
93話 鑑定依頼
しおりを挟む専務はシュンの手から取り読み始めた。
「どういう事だ…」
「スミさんの父親の遺言書ですね…えっ?」
専務は何度も読み返した。
「これ…柳本のこと一切書いてませんが…それどころか…」
「…うん」
「えっ…でもスミさんの父親の遺言書には柳本に会社を任せるって書いてあったんですよね?だから今社長の座にいるんじゃ…」
「専務、あいつが書いた書類を今からコピー出来る?」
「は…はい」
専務は裕二が書いた書類を探しに行った。
シュンはロッカーを閉め鍵をかけた後、遺言書を見返していた。
遺言書
遺言者 柳本慎一は本遺言書により以下の通り遺言する
第一条 妻 柳本道子に次の財産を取得させる
①土地
所在 東京都◯◯区◯◯町◯丁目◯番地 地積◯◯㎡
②建物
所在 東京都◯◯区◯◯町◯丁目◯番地
家屋番号◯番◯種類居宅
床面積1階◯◯㎡
2階◯◯㎡
第二条 長女 柳本スミに以下の遺言者名義の預貯金を取得させる
・◯◯銀行◯◯支店 定期預金 口座番号◯◯◯◯
・A株式会社の株式 数量◯◯株
・B株式会社の株式 数量◯◯株
(株)柳本グループは長女柳本スミ もしくは柳本スミの心から信頼出来る夫(岡田裕二以外)に託す
遺言者 柳本慎一 ㊞
専務から裕二の筆跡がある書類のコピーを何枚かもらうとシュンはスミの実家に行った。
「地曽田さん…」
「度々すみません」
「どうしたの?」
「今日はお願いがあって来たんですが」
「何?」
「あの…何でもいいんですが、お父様が書いた物…ありますか?」
「え?主人が書いた物?遺言書じゃなくて?」
「はい」
「会社の書類とかならあるけど」
「それでいいです。それと…この前見せてもらった遺言書を貸して頂けないでしょうか?」
「え?どうして⁈」
「調べたい事があるんです‼︎今はまだはっきりしていませんので詳しい事は言えませんが…」
「どういう事?」
「はっきりわかり次第すぐにお伝えしますのでお願いします‼︎」
頭を下げるシュンを見て母親は書類と遺言書を取りに行きシュンに渡した。
「なぜだかわからないけど…そこまで頭下げられたら貸すしかないわね。あなたは悪用する人じゃないからいいわよ。その代わり何で必要だったかはちゃんと教えてよ」
「わかりました。ありがとうございます‼︎」
シュンは急いで家に帰った。
家に着くとテーブルの上に裕二が書いた書類とスミの母親から借りた遺言書、そしてスミの父親が書いた書類とロッカーに入っていた遺言書を並べた。
しばらく見比べていたシュンはある事に気付いた。
スミの父親が書いた(柳)の文字が個性ある書き方でロッカーに入っていた遺言書の(柳)の文字と一緒だったのだ。
間違いない…
スミのお父さんが書いた本物の遺言書はこれだ…
この遺言書はあいつが書いたやつだ…
確信したシュンだが裕二は絶対ごまかすに違いないと思い、翌日筆跡鑑定の依頼に行った。
夕方、鑑定の結果が出たと連絡がありシュンは急いで依頼所へ行った。
「まずこちらが鑑定結果です」
すると鑑定師がシュンに1枚の紙を渡した。
確認するとシュンの思った通りだった。
「内容からいくとこちらが偽造ですよね?」
「…はい」
「遺言書の偽造は刑罰に問われますよ」
「そうですね」
それ以上鑑定師は何も言わなかった。
「ありがとうございました」
その足でシュンは急いでスミの実家に向かった。
こんなやり方…絶対に許さない!!
絶対に!!
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