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30話 寝言
しおりを挟むホテルに着くとスミを抱えたまま入り口で止まった。
入りづらいな…おんぶの方がいいかな…
シュンはスミを背負ってロビーに行った。
「しっ…社長っ⁈」
「シィーッ。部屋の鍵貸して」
「はっ…はいっ…」
シュンは鍵を受け取るとエレベーターに向かった。
受付の男性はシュンの姿をただ呆然と見ていた。
部屋に入るとスミをベッドに寝かせた。
2人を介抱したシュンは疲れ果てていた。
スミとここに一緒にいる訳にいかないし…
俺は帰らないとな…
シュンが部屋を出ようとした時、スミの顔を見て足が止まった。
スミは苦しそうな顔をしていた。
「スミ?」
「シュ…ン…シュン…」
「え…?」
スミは毎晩のように寝言でシュンの名前を呼んでいたのだ。
「どうした?」
「、、、、」
寝言か…
何で俺の名前を…
スミの目からは涙が流れていた。
何で泣くんだよ…
シュンはスミの涙を拭きながらスミの顔をしばらく見つめていた。
スミが俺を振ったんだろ…
俺のことが嫌になって…
寝言でも俺の名前言っちゃダメだよ…
期待しちゃうじゃないか…
シュンは静かに部屋を出て行った。
翌朝、8時過ぎに目覚めたスミは周りを見渡した。
えっ…どこ?…ホテル…?
どうして…
そっか…昨日3人で飲んでたんだ…
中田秘書が寝てしまって…
私とシュンは2人で飲んで…それから…
思い出せない…途中からの記憶がない…
スミは部屋の鍵を持ってフロントへ行った。
「あの…チェックアウトしたいんですが」
この女性、昨夜社長におんぶされてた人だ…
「お支払いは大丈夫ですよ」
「え?どうしてですか?」
「社長のお知り合いですよね」
「社長?あの…すみません。私昨夜どうやってこのホテルに来たか…わかりませんよね…?」
「地曽田社長が抱えて連れて来られましたよ」
シュンが…⁈
ここ…地曽田グループのホテルなのね…
「そうですかっ…お世話になりました」
スミは顔を真っ赤にし足早にホテルを出て行った。
その頃ぐっすり寝ていたテルはスミの母親からの着信で目を覚ました。
「会長っ!おはようございますっ」
「休みの日にごめんなさいね」
「いえっ、どうされました?」
「昨日はスミと一緒だったのよね?」
「えっ…はい」
「社員との食事会の後、中田秘書と飲むから遅くなるって昨夜スミから連絡もらったんだけど…」
「あっ…はい」
「もしかして…今一緒にいるの?」
「え?今…ですか?いませんけど」
「そっ…そうよね」
「え…帰って来てないんですか?」
「ええ。携帯も繋がらないし…あの子どこに泊まったのかしら」
「、、、、」
「わかったわ。朝早くからごめんなさいね」
「は…はい」
電話を切った後、テルは一気に二日酔いから覚めた。
帰って来てないって…
俺が酔って寝てしまって…
その後の記憶がない…
俺はちゃんと家に送られてるのに…
まさか兄貴と…?
テルはシュンに電話をかけた。
「もしもし」
「もしもし兄貴っ」
「おはよ」
「おはようございますっ。あのっ…昨日はすみませんでした。また酔い潰れてしまって…」
「全く起きないから感心するよ。鍵はポストに入れてるからね」
「あっ…ありがとうございますっ。それとお金、払ってくれたんです…よね?」
「あ…うん」
「請求して下さいっ。僕が奢るつもりだったので」
「気が向いたらね」
「兄貴…今どこですか?」
「今?家だけど」
「1人ですか?何してました?」
「1人だけど?寝てたよ」
「昨日、僕が寝てしまった後しばらくお店にいたんですか?」
「あ…うん」
「社長はどうやって帰られたんですか?」
「え…2人ともタクシーで送ったよ」
「…そ…そうですか」
「今日はゆっくりしとけよ」
「あの兄貴っ、社長は酔ってましたか?」
「…うん。どうして?」
「ちょっと聞いてみただけですっ。お休みの時にすみませんでした。じゃあ」
「うん」
兄貴…送ったなんてどうして嘘ついたんだろ…
2人は何かあったのかなぁ…
あぁ…何も考えたくない…二度寝しよ…
家に着いたスミは静かに玄関を開けてこっそり家に入ると、母親が立っていた。
「おっ…お母さん」
「おかえり」
「た…ただいま」
「どこに泊まったの⁈」
「ビ…ビジネスホテルに泊まったの。酔って帰るのが面倒になって…」
「そうなのね…それより何その顔。メイクも落とさずに寝たのね?シャワー浴びて来なさい」
「…うん」
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