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37話 酔うのがもったいない
しおりを挟む「そろそろ帰ろうか」
「僕はもうちょっとここに居ます。社長はもう行って下さい」
「…うん。じゃ…また明日ね…」
スミが帰ってしまうと、秘書は我慢していた涙が一気に溢れてきた。
30分後、秘書は立ち上がりシュンの家に向かった。
22時過ぎ、シュンが荷物をまとめているとチャイムが鳴った。
今頃…誰だろ…
玄関を開けるとお酒が入った袋を持ったテルが立っていた。
「テル!えっ…明日じゃなかった?」
「明日まで待ち切れず来ちゃいました。あっ…いきなり来たけど大丈夫でした?」
「あっ…うん。上がって」
「はーい。お邪魔しまーすっ」
今日…スミに告白するって言ってたけど…
もしかして…
「ビール買って来たんで飲みましょっ」
「送別会で飲んでないの?」
「はい…」
ビールを開けたテルは勢いよく飲んだ。
「兄貴、何してたんですか?」
「明日テルが来る予定だったから、今のうちに明後日の準備をしてたよ」
「あ…そっか…兄貴は福岡に行っちゃうんでしたね…僕もついて行こうかな…」
「え?」
「見事にフラれちゃいました…」
「…な…何で?」
「僕がダメなんかじゃなく誰とも付き合う気がないんですって。一生1人でもいいって…そんなこと言われたら諦めるしかないでしょ」
「、、、、」
「だからっ…今日はとことん飲みますっ」
「テル…」
「僕…フラれたの初めてなんですけど、こんな気分なんですね…」
「今日は酔い潰れるまで飲んでいいよ」
「泊まっていいんですか?」
「いいよ。ただ俺と2人でソファーに寝てもらうけど」
「兄貴はベッドで寝て下さいっ」
「ちょっと来て」
シュンはテルを寝室に連れて行き、そっとドアを開けた。
ベッドには知らない女の子が寝ていた。
「えっ…誰ですかっ?」
ドアを閉めて2人はリビングに戻った。
「近所の子だけど、明後日一緒に連れて行くんだ。今の生活環境がよくないから」
「それで…兄貴があの子を預かってるんですか⁈」
「心配だから。それに新しい事業を始めようと思ったのもあの子のおかげだから」
「何か…兄貴のこと本当に尊敬します。僕が女性だったら兄貴と付き合いたいです。何で社長は兄貴と別れたんだろ…」
「テ…テル。だから今日はソファーで一緒に寝よう」
「わかりましたっ」
そして時刻は0時を回った。
シュンは掛布団を持って来た。
「そろそろ寝ようか」
「はい」
「今日は酔い潰れなかったね」
「…兄貴ともしばらく会えないし、酔い潰れたらもったいないから…」
「テル…」
電気を消すとしばらく沈黙が続いた。
「寝た?」
「はい」
「起きてるじゃん」
「ハハハ」
「テル…俺に弟が出来たみたいで嬉しかった。テルと出逢えてよかったよ」
「僕もです。だから兄貴がいなくなったら寂しいですっ」
「遊びにおいでよ。海も綺麗だし…いい所だよ」
「行きますっ!兄貴もちょくちょく戻って来るんですよね?」
「しばらくは帰らないと思う…」
「兄貴…いつ頃戻る予定ですか?長くて1年くらい?」
「…わからない」
「えっ…何年も戻って来ないって事もあるんですか?」
「…うん」
「そんなの嫌ですっ。それにご両親だって悲しみますよっ」
「言ってなかったけど…産みの母親は亡くなってて今の母親は継母なんだ」
「え…そうだったんですか…」
「継母とは縁を切りたいくらい…顔も見たくない。だからちょうどよかったんだ」
「縁を切りたいって…何かあったんですか…?」
「ちょっとね…」
「よっぽどの事があったんですね…でも何年も戻らないつもりなら僕もついて行って兄貴の元で働きたいです。子供好きだし」
「何言ってるんだよ。テルは今の仕事があるだろ」
「…そうですけど…フラれたのに毎日顔合わせなきゃいけないなんて…このまま秘書の仕事やっていけるかなー」
「いつも前向きなテルがどうした?」
「だって…」
「テルなら大丈夫だよ。頑張れ」
テルは深くため息をついた。
「明後日は何時の飛行機で行くんですか?」
「16時だよ」
「あの子と一緒に…ですね」
「あの子は朝の便で秘書と一緒に行くよ。俺は午前中会社に寄って専務と打ち合わせして行くから」
「…そうですか」
「いつでも連絡してきていいから」
「はい…」
「明日は遅刻しないように送るから、もう寝よう」
「はい…おやすみなさい」
「おやすみ」
テル…ありがとう…
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