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39話 父親の頼み
しおりを挟む「もしもし」
「兄貴っ、今大丈夫ですか?」
「うん。長話しは出来ないけど」
「はいっ。無事に着いたんですね」
「うん。やる事が多くて大変だよ」
「そうですか…兄貴…」
「何?」
「今日…空港でうちの社長と会いませんでしたか?」
「会ってないけど…どうして?」
「え…じゃ…間に合わなかったんだ…どおりで…」
「どういう事?」
「今日…取引先の社長と話してる途中、社長が急に飛び出して行ったみたいで…」
スミが…
「17時過ぎに戻って来たんですけど…多分空港に行ってたはずです。兄貴が16時の便で発つこと話したから」
「、、、、」
「社長が兄貴を振ったって聞いたけど本当は違うんじゃないですか?社長は兄貴のことをまだ…」
「テル、ごめん。業者が来たから打ち合わせに入る。ごめん。じゃまた」
「あっ…はっ…はい」
スミ…どうして空港に来たんだ…
今さら俺と会ってどうするつもりだったんだ…
ダメだ…考えるのはよそう…
シュンは自分に言い聞かせていたがスッキリしなかった。
翌日、スミが社長室で仕事をしていると内線が鳴った。
「はい」
「地曽田様がお見えなんですが」
「え…地曽田さん?通して」
「はい」
地曽田さんって…
コンコン
「どうぞ」
シュンの父親だった。
「お父様っ」
「突然押しかけてすまない」
「いっ…いえ…どうぞ」
「ありがとう。スミさん…」
どうして…お父様が…
「久しぶりだね。元気にしてたかね」
「はっ…はい。お父様は?」
「…元気って言えば嘘になるかな」
「…え…」
「スミさん…本当に申し訳なかった。うちのが…直接こうして謝りたかったが…遅くなって本当にすまない…」
「いいえ。お父様が悪いわけじゃないですし」
「いいや。私が妻と別れればスミさんとシュンは別れる必要なかったんだ」
「お父様…」
「でも私は別れられない…妻しかいないんだ。私にとってはいい妻なんだよ」
「…わかってます。もう終わった事ですし私も母も、もう継母さんと会う事はないですから」
「シュンとは…全く会ってないのか?」
「何度か偶然会いました」
「そうか…シュンから何も聞いてないか?」
「え?」
「妻のこと…シュンに知られてしまったんだ。私と妻が言い合いになってる時、シュンに聞かれて…」
やっぱり…
「そ…そうですか…」
「もう何を言ってもシュンは妻と向き合わないだろう。福岡に行ってしまったし、このまま帰って来ない気がしてな…」
「、、、、」
「あ…スミさんにこんなこと話してすまないね」
「いえ…」
「スミさんはまだシュンのこと…それとも他にいい人が出来た?」
「正直、忘れようと何度も努力しましたが無理みたいです。シュンさんとはもうどうにもならない事もわかってます。だからといって他の人と付き合う事は考えられません」
「そうだよな…嫌で別れたんじゃないからね。本当に何と言っていいか…」
シュンの父親は申し訳なさそうに下を向き胸を押さえた。
「お父様!顔上げて下さい。胸が苦しいんですか?」
「だ…大丈夫だ。シュンも一生独りでいるつもりだし…このまま戻って来なかったら…私はどうしたらいいんだ…」
「お父様…戻って来ますよ。シュンさんはお父様を見捨てたりしませんよ」
「スミさん…無理なお願いしてもいいかな…」
「…何でしょうか」
「福岡へ行って落ち着いたら帰るようシュンに言ってもらえないだろうか…スミさんの言うことなら…」
「それは…すみません…出来ません…」
「スミさん…」
「すみません…お父様」
「そうだよな…すまなかった」
シュンの父親は立ち上がった。
「もう行くよ」
「あっ…はい」
「一応渡しておくよ」
「えっ」
スミにメモを渡した。
「じゃ…スミさん、体に気をつけて頑張るんだよ」
そう言うとシュンの父親は社長室を出て行った。
メモ用紙に書かれていたのは、シュンが居る福岡の施設の住所だった。
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