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58話 シュンの甘え
しおりを挟む「スミ、今日の夜空いてる?」
「今日?うん…空いてるけど」
「飲みに行かない?」
「え…」
「ほらっ、接待してよ。取引先だろ」
「…うん」
「じゃ…時間と店はメールするよ」
「わかった」
シュンは会社に戻った。
シュンったら…
接待される側なのに結局シュンが決めるのね…
スミは思わず笑った。
シュンはスミを元気づけたかったのだ。
20時になりスミは先にお店に着いてシュンが来るのを待っていた。
5分過ぎた頃シュンが走って来た。
「遅れてごめんっ」
「シュンが遅れるって珍しいね」
「ちょっと仕事が忙しくて。とりあえず飲もう。何飲む?」
「じゃあ、ビール」
「ビールね。料理は適当に頼むよ」
「うん」
料理が運ばれ2人で乾杯した。
「仕事…忙しいんだね?」
「うん、すごく忙しい」
「どうして?」
「どうしてって…色々増やすからね」
「色々って?」
「えっ?ホテルとかグループが持ってる施設だけど…」
「じゃ、色んな所に土地を買ってるの?」
「うん」
「別に何もないんだよね?」
「何が?」
「ううん。何でもない。それよりシュン…ちゃんと寝てる?」
「最近は寝不足かな…何で?やつれてる?」
「うん。私に何か出来る事があれば言ってね。こっちは助けてもらってばかりだから」
「ありがとう。でも大丈夫だから」
「本当…あの人どうにかならないかな」
「スミ、今日はあいつの話はやめよう。酒が不味くなるだろ」
「そっ…そうだね。わかった」
1時間後…
「私、ワイン頼むけどシュンは何にする?」
「、、、、」
「シュン?」
「あっ…じゃ俺も」
寝不足のせいかシュンは珍しく酔っていた。
「じゃ…改めて乾杯」
「うん」
「何かさっぱりしたの食べたいなぁ」
メニューを見ているスミをシュンはじっと見つめていた。
「可愛い」
「えっ?」
「スミは変わらないね。相変わらずいい女だよ」
「ちょっと…やめてよぉ」
「このままずっと1人でいるつもり?」
「…うん」
「でも、お母さんはそう望んでないんじゃないの?」
「それは…シュンはどうなの?彼女作らないの?」
「スミ以外の人は考えられないよ」
「…え」
「だから彼女はいらない」
「でっ…でも」
「また俺の彼女になってくれる?」
「えっ…」
シュン…何言ってるの…?
「冗談だよ」
「シュン…」
「ちょっとお手洗いに…行って来る」
シュンが立ち上がろうとすると足がふらついた。
「大丈夫っ?」
「う…うん」
スミは心配でシュンがお手洗いに行くまでついて行った。
もしかして…酔ってるのかな…
でもシュンはあれだけの量で酔う訳ない…
「スミ、待っててくれたの?」
「うん…シュン大丈夫?」
シュンはスミの肩に手を回して来た。
「えっ…シュン?」
「酔ったみたい…」
シュンの顔が近づいてきてスミは思わず避けた。
「と…とりあえず、お店出ようか」
「…うん」
会計を済ませて2人は店を出た。
シュン…もう…どうしちゃったのよ…
シュンはスミの手をずっと握ったまま離さない。
スミは胸の高鳴りが止まらなかった。
「あっ…タクシーが来たよ」
スミがタクシーを止めた。
「シュン、乗って」
スミが手を離そうとしてもシュンは強く握ったままだった。
「あの…私、逆方向だから」
「送って…」
「え…」
結局スミは一緒にタクシーに乗った。
シュンはスミに寄りかかり握った手を離さなかった。
「…離れたくない」
「えっ…」
「酔いが覚めるまで一緒に居て…」
「シュン…どうしちゃったの?」
「スミと一緒に居たいんだ…」
シュン…そんなこと言われたら…
離れたくなくなるじゃない…
2人はそのまま地曽田グループのホテルに行った。
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