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85話 気まずい2人
しおりを挟むしばらく待っているとスミの母親が玄関のドアを開けた。
「地曽田さんっ…えっ?スミ⁈」
「すみません。酔ってしまって」
「あらやだっ、スミ!起きなさいスミ‼︎」
「起きないと思います。ベッドまで運びますが…いいですか?」
「えっ…えぇ」
シュンは母親にスミの部屋を案内してもらい、ベッドに寝かせた。
「では…失礼します」
「あっ…お茶でも…飲んで行かない?」
「え」
「いいから座りなさい」
「はい…」
「聞いたわ…お父様のこと…」
「あっ…はい」
「大変だったわね…葬儀には行かなくてごめんなさい」
「そんな…いいですよ」
「今度、手を合わせに伺わせてもらうわ」
「ありがとうございます」
「あの人は…」
「え?」
「あっ…何でもないわ」
スミの母親は継母のことを聞こうとしたが聞くのをやめた。
「あの…それから…うちの会社の事、ありがとう。専務を社長にしてくれて」
「そうするのが1番ベストだと思って」
「そうね。本当はもっと早くお礼を言うべきだったけど…お父様のこと聞いたから、遅くなったけど本当にありがとう」
「いいえ。何かあればいつでも言って下さい。サポートしますので」
「えぇ。だけど私はもうあまり口出ししないわ。あなたの会社がついてるから安心だし。黒川社長に全て任せるわ」
「わかりました」
「ところで…今日はスミと一緒に居たのね」
「あっ…はい。すみません」
「スミは友達と遊びに行くって言って出かけて行ったから…」
「えっ…そ…そうですか」
どことなくお互いに気まずかった。
「じっ…じゃあ…そろそろ失礼します」
「えぇ…」
「お茶、ごちそうさまでした」
「スミを送ってくれてありがとう」
「はい。それでは」
シュンはスミの家を後にした。
シュンは途中でタクシーを降りて、行きつけのバーに寄った。
「地曽田さん…お1人ですか?」
「うん。マスター、ウイスキーちょうだい」
「はい」
シュンはウイスキーを一気に飲み干した。
「ボトル…置いておきますね」
「うん。それと…父の葬儀に来てくれてありがとう」
「いいえ」
「マスターはたまには実家に帰ってる?」
「あんまり帰ってないですね」
「俺が言うのも何だけど、たまには帰って親孝行した方がいいよ」
「…そうですね」
「じゃないと…俺みたいに後悔するから」
「…地曽田さん」
「もう俺には家族は居ない…1人になっちゃったよ…」
マスターは何て言葉をかけていいかわからず黙って聞いていた。
シュンはその後1時間ほど飲み続けて家に帰った。
家に帰り着くと仏壇の前で眠った。
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