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囚われの親子編
第5話 会遇(五)
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「加勢するか……?」
他人の獲物を横取りするのはタブーだという暗黙の了解が魔法師界には存在する。とはいえ、対峙している魔法師が危機的状況に陥っていた場合は救援することを推奨されている。
その二つの境界線が曖昧で判断が難しいところではあるが、ジルヴェスターとレアルは友人同士だ。結果がどちらであろうと両者で争うことにはならないだろう。
「一旦待つか」
だが、ジルヴェスターは一応様子見することにした。
レアルが本当に危険そうなら助太刀することにし、いつでも加勢できるように準備は怠らない。
レアルを取り囲むブラッディウルフの群れは、彼に休む暇を与える隙も無く次々と飛び掛かっていく。
一匹が牙を剝き出しにして飛び掛かると、レアルは手に持つ剣で袈裟斬りにする。
そして今度は間髪いれずに二匹のブラッディウルフが左右から飛び掛かっていく。
(――! まずい!)
挟み撃ちされる格好になったレアルが、剣を頭上に翳して魔法を行使する挙動に入ったのを確認したジルヴェスターは、金色に輝く自分の瞳を守る為に瞼を閉じる。
そしてレアルは瞬時に魔法を行使した。どうやら彼は剣の武装一体型MACを使用しているようだ。
すると、レアルを中心に辺り一面を煌々と照らす閃光が発生する。
ジルヴェスターは危うく視力を奪われるところだった。
瞼越しに光が収まったのを認識したジルヴェスターは瞼を開く。
(魔法の発動速度が速い。さすがの腕だな)
感心するジルヴェスターは口元を緩める。
戦況を把握してから対応方法を選択し、魔法を行使する場合は魔力をMACに流し込む。その後にMACが術式を展開して魔法が発動される。
戦闘中にこれらの段階を踏まなければならないのだが、レアルはそれまでのプロセスが流動的で素早かった。
(既に最低でも中級以上の実力はあるな)
そんなレアルの実力をジルヴェスターは冷静に推し量る。
レアルが行使した魔法は閃光だった。
何故ジルヴェスターが発動する前の魔法を判断し、瞼を閉じることが可能だったのか――それは彼の瞳に理由があった。
彼の瞳はただの瞳ではない。彼は所謂『魔眼』と呼ばれる希少な瞳を有している。
一口に魔眼と言っても、魔眼には様々な種類がある。
そもそも魔眼を持って生まれてくること自体非常に珍しい。魔法師でも魔眼持ちに一生出会えないのが当たり前の世の中だ。
魔眼によって様々な能力を持つ。
一つの能力しか持たない魔眼もあれば、複数の能力を有する魔眼も存在する。
強力な魔眼もあれば、あまり実用的ではない魔眼もある。
仮に同じ能力を有していても効力に差があったりする。
同じ物が存在しない唯一無二の代物なのが魔眼の特徴だ。
そしてジルヴェスターの魔眼が持つ能力の一つには、魔法師が発動する術式を読み取ることができるという物がある。
故に魔法師が魔力をMACに流し込み、MACが術式を展開する一瞬の間に読み取ることが可能なのだ。
この能力は本来不遇と呼ばれても仕方のない能力である。
術式を読み取れても、そもそも発動される術式を理解する知識を有していなければ意味がない代物だからだ。
それにMACが術式を展開するまでの一瞬の間に読み取り、どの魔法が発動されるのかを瞬時に理解するなど誰にでもできることではない。
知識、理解力、思考速度、これらを有するジルヴェスターだからこそ上手く活用できているにすぎなかった。
閃光を行使したレアルは反転して逃げの一手に出た。方向は当然、国を囲う壁だ。
対して視力を奪われたブラッディウルフは混乱している個体がいる。
しかし、ボスと思われる冷静な個体が一鳴きすると、一斉にレアルを追い掛けるように駆け出した。
ブラッディウルフは狼型の魔物なだけあり鋭い嗅覚を持っているので、視力を奪われていても匂いを頼りに獲物を追うことができる。
逃走を試みるレアルと、追跡するブラッディウルフの群れ。
両者の追い掛けっこの様相を呈すると思われたその時――突然レアルが頭を押さえて蹲った。
(――!)
突然の事態にさすがのジルヴェスターも瞠目する。
蹲るレアルは立ち上がる素振りを見せない。
そんなレアル目掛けて容赦なく猛追するブラッディウルフの集団。
(これは……さすがにまずいか……)
ジルヴェスターにも予想外のことはある。
獲物を横取りするのはタブーなどと言っていられる状況ではない。現在の状況は救援を推奨する場面だ。
既に様子見する段階は過ぎ去った。
救援が必要だと瞬時に判断したジルヴェスターは、魔法を行使する為に左手首に嵌めている汎用型のMACに魔力を送り込む。そして一秒も経たない速度で目当ての魔法を行使した。
他人の獲物を横取りするのはタブーだという暗黙の了解が魔法師界には存在する。とはいえ、対峙している魔法師が危機的状況に陥っていた場合は救援することを推奨されている。
その二つの境界線が曖昧で判断が難しいところではあるが、ジルヴェスターとレアルは友人同士だ。結果がどちらであろうと両者で争うことにはならないだろう。
「一旦待つか」
だが、ジルヴェスターは一応様子見することにした。
レアルが本当に危険そうなら助太刀することにし、いつでも加勢できるように準備は怠らない。
レアルを取り囲むブラッディウルフの群れは、彼に休む暇を与える隙も無く次々と飛び掛かっていく。
一匹が牙を剝き出しにして飛び掛かると、レアルは手に持つ剣で袈裟斬りにする。
そして今度は間髪いれずに二匹のブラッディウルフが左右から飛び掛かっていく。
(――! まずい!)
挟み撃ちされる格好になったレアルが、剣を頭上に翳して魔法を行使する挙動に入ったのを確認したジルヴェスターは、金色に輝く自分の瞳を守る為に瞼を閉じる。
そしてレアルは瞬時に魔法を行使した。どうやら彼は剣の武装一体型MACを使用しているようだ。
すると、レアルを中心に辺り一面を煌々と照らす閃光が発生する。
ジルヴェスターは危うく視力を奪われるところだった。
瞼越しに光が収まったのを認識したジルヴェスターは瞼を開く。
(魔法の発動速度が速い。さすがの腕だな)
感心するジルヴェスターは口元を緩める。
戦況を把握してから対応方法を選択し、魔法を行使する場合は魔力をMACに流し込む。その後にMACが術式を展開して魔法が発動される。
戦闘中にこれらの段階を踏まなければならないのだが、レアルはそれまでのプロセスが流動的で素早かった。
(既に最低でも中級以上の実力はあるな)
そんなレアルの実力をジルヴェスターは冷静に推し量る。
レアルが行使した魔法は閃光だった。
何故ジルヴェスターが発動する前の魔法を判断し、瞼を閉じることが可能だったのか――それは彼の瞳に理由があった。
彼の瞳はただの瞳ではない。彼は所謂『魔眼』と呼ばれる希少な瞳を有している。
一口に魔眼と言っても、魔眼には様々な種類がある。
そもそも魔眼を持って生まれてくること自体非常に珍しい。魔法師でも魔眼持ちに一生出会えないのが当たり前の世の中だ。
魔眼によって様々な能力を持つ。
一つの能力しか持たない魔眼もあれば、複数の能力を有する魔眼も存在する。
強力な魔眼もあれば、あまり実用的ではない魔眼もある。
仮に同じ能力を有していても効力に差があったりする。
同じ物が存在しない唯一無二の代物なのが魔眼の特徴だ。
そしてジルヴェスターの魔眼が持つ能力の一つには、魔法師が発動する術式を読み取ることができるという物がある。
故に魔法師が魔力をMACに流し込み、MACが術式を展開する一瞬の間に読み取ることが可能なのだ。
この能力は本来不遇と呼ばれても仕方のない能力である。
術式を読み取れても、そもそも発動される術式を理解する知識を有していなければ意味がない代物だからだ。
それにMACが術式を展開するまでの一瞬の間に読み取り、どの魔法が発動されるのかを瞬時に理解するなど誰にでもできることではない。
知識、理解力、思考速度、これらを有するジルヴェスターだからこそ上手く活用できているにすぎなかった。
閃光を行使したレアルは反転して逃げの一手に出た。方向は当然、国を囲う壁だ。
対して視力を奪われたブラッディウルフは混乱している個体がいる。
しかし、ボスと思われる冷静な個体が一鳴きすると、一斉にレアルを追い掛けるように駆け出した。
ブラッディウルフは狼型の魔物なだけあり鋭い嗅覚を持っているので、視力を奪われていても匂いを頼りに獲物を追うことができる。
逃走を試みるレアルと、追跡するブラッディウルフの群れ。
両者の追い掛けっこの様相を呈すると思われたその時――突然レアルが頭を押さえて蹲った。
(――!)
突然の事態にさすがのジルヴェスターも瞠目する。
蹲るレアルは立ち上がる素振りを見せない。
そんなレアル目掛けて容赦なく猛追するブラッディウルフの集団。
(これは……さすがにまずいか……)
ジルヴェスターにも予想外のことはある。
獲物を横取りするのはタブーなどと言っていられる状況ではない。現在の状況は救援を推奨する場面だ。
既に様子見する段階は過ぎ去った。
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