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囚われの親子編
第16話 第六席(二)
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「あれ~? あれれ~?」
姿を現したビアンカは目にした光景に一瞬目を瞬かせたが、すぐに面白いものを見たとでもいうような表情を浮かべる。
「モブ男くんに呼び出されて出向いたかと思えば……いつの間に二人はそんな関係に?」
「モブ男くんって……」
ビアンカの言い様にさすがのレベッカも同情する。
「ジルくんとタイミング良く遭遇したから利用させてもらっちゃった」
「なるほど~」
レベッカの言葉足らずな説明をビアンカは正確に読み取り状況を把握した。
「ジルくん、レベッカが迷惑掛けたようで悪かったねぇ~」
「いえ、先輩が謝罪することではないのでお気になさらず」
「ふふ。ありがとう~」
ジルヴェスターがそう答えると、ビアンカは微笑んだ。
「なんならこのままレベッカのこと貰ってくれてもいいんだよぉ~?」
「確かにジルくんは将来有望で見た目がいいし、性格も悪くない。ありよりのありじゃん! どうする? 貰っちゃう?」
ビアンカの提案にレベッカもノリノリだ。
より一層ジルヴェスターに胸を押し付けて屈託のない笑みを向ける。冗談なのか本気なのか判断が難しいところだ。
ジルヴェスターの顔面偏差値は高い。尚且つ背が高くてスタイルもいい。魔法師としても優れており、勉学も優秀だ。間違いなく将来有望である。――将来有望どころか現在進行形で特級魔法師第一席なのだが。
「それは魅力的な話だが遠慮しておく」
「ありゃ、それは残念」
ジルヴェスターは考える間もなく断りを入れる。
断られたレベッカも全然残念そうではない。やはりその場のノリの意味合いが強かったのだろう。
「お前は間違いなくいい女だし、一緒にいるとさぞ幸福なことだろう」
ジルヴェスターは真面目な顔でそう言うと、自分の金色に輝く瞳でレベッカの目を見つめながら続きの言葉を口にする。
「だから幾人もの男が放っておかないさ。それこそ俺よりもいい男がな」
「あ、ありがとう?」
告げられた言葉にレベッカは照れを誤魔化すように顔を伏せ、吃りながら言葉を返す。
(凄く綺麗な瞳……)
至近距離で見つめ合う形になったレベッカの脳内に、ジルヴェスターの瞳の輝きが刻み込まれた。
(――あ、落ちた)
後輩二人のやり取りを見ていたビアンカは、レベッカの表情を見て察した。
長い付き合いだ。幼馴染のことは手に取るようにわかる。
(後輩くんやるなぁ~。狙ってやっているようには見えないし、天然ジゴロかな?)
妹のように可愛がっている幼馴染のことが微笑ましくなり、成り行きを黙って見守る。
ジルヴェスターのことはある意味感心していた。
事実、ジルヴェスターは無自覚でやっているので、天然ジゴロと言われても仕方がないのかもしれない。
「先輩を待たせているし、俺はこれで失礼する」
「あ、うん」
いつまでもビアンカを待たせるわけにはいかないと思ったジルヴェスターは、この場を退散することにし、自分の左腕に絡めているレベッカの両腕を優しく解く。
当のレベッカは無意識に少し残念そうにしていたが、幸か不幸かジルヴェスターには気づかれていなかった。――もっとも、ビアンカには筒抜けだったが。
「わたしのことは気にしなくてもいいんだよ~」
ビアンカはレベッカの後押しをするのを兼ねて自分のことは気にしないように促す。
朝のホームルームまでまだ時間がある。少しでも一緒にいさせてあげようという姉心だ。
それにビアンカはレベッカのことを抜きにしても本当に気にしていないので、ジルヴェスターがこのままいてくれても一向に構わなかった。
「いえ、折角の申し出ですが今日のところは遠慮しておきます」
「そっか~。それは残念」
「ではまた」
そう告げると、ジルヴェスターは颯爽と去っていった。
ジルヴェスターの姿が見えなくなると、ビアンカがレベッカに語り掛けるように告げる。
「きっと彼は競争率高いよ~?」
「――そ、そんなんじゃないって!」
姉貴分の揶揄いと真剣さが内在した言葉に、レベッカは赤面しながら慌てて否定する。全く説得力がないのが微笑ましい。
(クラウディアがいるしこの子には厳しいかな~)
ビアンカはレベッカの最大のライバルになる同級生のことを思い浮かべる。
(この子もかわいくていい子だけど、さすがにクラウディアには勝てないよね~)
ビアンカはクラウディアほど完璧な女性はいないと思っている。
容姿、成績、実力、家柄、人格、器量など、どれを取ってもクラウディアは完璧な才媛だ。
間違いなくレベッカにとって最大のライバルになる存在であろう。
(そもそも既に後輩くんにパートナーがいたら意味のない話なんだけど)
ビアンカとレベッカは、ジルヴェスターのプライベートのことを知らない。
既に彼にパートナーがいた場合は全くもって無意味な問答であった。
(まずはそこから探らないとね~)
姉貴分として可能な限りかわいい妹分に協力するつもりだが、結局のところは本人次第だ。
「ふふ。まあ、そういうことにしておくよ~」
「いや、だから――」
心底楽しそうなビアンカと、必死に取り繕うレベッカの二人の間には全く壁がない。完全に心を許しているのが良くわかる。
その後も姉妹のように仲のいい二人の賑やかな声が辺りにこだまするのであった。
姿を現したビアンカは目にした光景に一瞬目を瞬かせたが、すぐに面白いものを見たとでもいうような表情を浮かべる。
「モブ男くんに呼び出されて出向いたかと思えば……いつの間に二人はそんな関係に?」
「モブ男くんって……」
ビアンカの言い様にさすがのレベッカも同情する。
「ジルくんとタイミング良く遭遇したから利用させてもらっちゃった」
「なるほど~」
レベッカの言葉足らずな説明をビアンカは正確に読み取り状況を把握した。
「ジルくん、レベッカが迷惑掛けたようで悪かったねぇ~」
「いえ、先輩が謝罪することではないのでお気になさらず」
「ふふ。ありがとう~」
ジルヴェスターがそう答えると、ビアンカは微笑んだ。
「なんならこのままレベッカのこと貰ってくれてもいいんだよぉ~?」
「確かにジルくんは将来有望で見た目がいいし、性格も悪くない。ありよりのありじゃん! どうする? 貰っちゃう?」
ビアンカの提案にレベッカもノリノリだ。
より一層ジルヴェスターに胸を押し付けて屈託のない笑みを向ける。冗談なのか本気なのか判断が難しいところだ。
ジルヴェスターの顔面偏差値は高い。尚且つ背が高くてスタイルもいい。魔法師としても優れており、勉学も優秀だ。間違いなく将来有望である。――将来有望どころか現在進行形で特級魔法師第一席なのだが。
「それは魅力的な話だが遠慮しておく」
「ありゃ、それは残念」
ジルヴェスターは考える間もなく断りを入れる。
断られたレベッカも全然残念そうではない。やはりその場のノリの意味合いが強かったのだろう。
「お前は間違いなくいい女だし、一緒にいるとさぞ幸福なことだろう」
ジルヴェスターは真面目な顔でそう言うと、自分の金色に輝く瞳でレベッカの目を見つめながら続きの言葉を口にする。
「だから幾人もの男が放っておかないさ。それこそ俺よりもいい男がな」
「あ、ありがとう?」
告げられた言葉にレベッカは照れを誤魔化すように顔を伏せ、吃りながら言葉を返す。
(凄く綺麗な瞳……)
至近距離で見つめ合う形になったレベッカの脳内に、ジルヴェスターの瞳の輝きが刻み込まれた。
(――あ、落ちた)
後輩二人のやり取りを見ていたビアンカは、レベッカの表情を見て察した。
長い付き合いだ。幼馴染のことは手に取るようにわかる。
(後輩くんやるなぁ~。狙ってやっているようには見えないし、天然ジゴロかな?)
妹のように可愛がっている幼馴染のことが微笑ましくなり、成り行きを黙って見守る。
ジルヴェスターのことはある意味感心していた。
事実、ジルヴェスターは無自覚でやっているので、天然ジゴロと言われても仕方がないのかもしれない。
「先輩を待たせているし、俺はこれで失礼する」
「あ、うん」
いつまでもビアンカを待たせるわけにはいかないと思ったジルヴェスターは、この場を退散することにし、自分の左腕に絡めているレベッカの両腕を優しく解く。
当のレベッカは無意識に少し残念そうにしていたが、幸か不幸かジルヴェスターには気づかれていなかった。――もっとも、ビアンカには筒抜けだったが。
「わたしのことは気にしなくてもいいんだよ~」
ビアンカはレベッカの後押しをするのを兼ねて自分のことは気にしないように促す。
朝のホームルームまでまだ時間がある。少しでも一緒にいさせてあげようという姉心だ。
それにビアンカはレベッカのことを抜きにしても本当に気にしていないので、ジルヴェスターがこのままいてくれても一向に構わなかった。
「いえ、折角の申し出ですが今日のところは遠慮しておきます」
「そっか~。それは残念」
「ではまた」
そう告げると、ジルヴェスターは颯爽と去っていった。
ジルヴェスターの姿が見えなくなると、ビアンカがレベッカに語り掛けるように告げる。
「きっと彼は競争率高いよ~?」
「――そ、そんなんじゃないって!」
姉貴分の揶揄いと真剣さが内在した言葉に、レベッカは赤面しながら慌てて否定する。全く説得力がないのが微笑ましい。
(クラウディアがいるしこの子には厳しいかな~)
ビアンカはレベッカの最大のライバルになる同級生のことを思い浮かべる。
(この子もかわいくていい子だけど、さすがにクラウディアには勝てないよね~)
ビアンカはクラウディアほど完璧な女性はいないと思っている。
容姿、成績、実力、家柄、人格、器量など、どれを取ってもクラウディアは完璧な才媛だ。
間違いなくレベッカにとって最大のライバルになる存在であろう。
(そもそも既に後輩くんにパートナーがいたら意味のない話なんだけど)
ビアンカとレベッカは、ジルヴェスターのプライベートのことを知らない。
既に彼にパートナーがいた場合は全くもって無意味な問答であった。
(まずはそこから探らないとね~)
姉貴分として可能な限りかわいい妹分に協力するつもりだが、結局のところは本人次第だ。
「ふふ。まあ、そういうことにしておくよ~」
「いや、だから――」
心底楽しそうなビアンカと、必死に取り繕うレベッカの二人の間には全く壁がない。完全に心を許しているのが良くわかる。
その後も姉妹のように仲のいい二人の賑やかな声が辺りにこだまするのであった。
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